最近薄味に慣れてしまったために社員食堂のうどんにお湯をさすようになってしまった。
職業病である。 いつものようにうどん定食を食べていると目の前にボスが座ってきた。
最初に考えたのは自分が何かやったのかということだった。
冷静になって思い出すが何も心当たりがない。
だがボスの発言はもっと衝撃的なものだった。
「お前、人間でいて不自由を感じないか?」
これはどういう意味なのか? 私に妖怪になれというのだろうか。
確かに妖怪の身体能力は高いし、長い寿命も得られるだろう。 だが、それは本当に幸せなことだろうか。
ボスは私の反応を見て楽しんでいる。 囲碁盤で一人で碁をさしているボスが見せる笑みに似てなくもない。
私がしどろもどろになるところを見届けると、「公私混同を命令するほど野暮ではない」と言って戻ってしまった。
過去に人間だったものが妖怪に転じた例はいくつかある。
上白沢も過去は人間だったらしいし、メトセラ娘は薬の服用で事実上妖怪になった存在である。
もっとも外の世界だって、人工臓器を駆使すればまるで妖怪のような身体能力と
寿命を得ることができるのも事実だ。
現実が妖怪に追いつこうとしているのである。
ではボスはなぜ人間をやめないかと取れる発言をしたのか?
気になって思索にふけるうちあっという間に夜になってしまった気がする。