幻想郷には現代社会が失った幻想の品々があるというが、常に形あるものとは限らない。
幻想郷では現代の社会が失った数々の風習も残っている。
その家は葬式のために、畳の並び方を変える作業をしていた。 外の世界ではすでに珍しい嗜好品と化した畳だが
幻想郷では畳文化が未だに残っている。
実は畳には敷物としての機能のほかにもう一つ重要な機能が存在する。
それはバリケードとしての機能である。 そもそも畳が今の姿になったのは戦国武将のアイデアである。
和室におなじみの床の間は、今で言うところの脱出経路として使うものだったし、
その床の間の構造そのものが追っ手から逃げるための仕込み武器が隠されている構造となっているのである。
私が新しい畳を納品したとき、サイズが違うとクレームがでたときがあった。
幸い妖怪ではなく人間からのクレームだったので、命の危険はなかったが
同じものだと思っていた畳が、幻想郷と外の世界でこうも違うのかということは
ちょっとしたカルチャーショックだった。
戦国の世の中ではない幻想郷の場合はどうだろうか。
それは決闘を行う妖怪たちから身を守るためのバリケードに姿を変えるのである。
弾幕は傍からみれば美しいが、民家の近くで決闘が起これば当然あちらこちらに被害が出るのだ。
このように幻想の物となった物品や文化は、幻想郷ならではの変質こそあれ、その文化の意義は幻想郷の住人によって
伝えられていくのである。