□月 △日 No171 真剣勝負


閻魔様が武闘派とは聞いていたが、ひょんなことから始まった閻魔様と美鈴氏との
弾幕抜きの戦いは非常に面白かった。
美鈴氏の使う拳法は太極拳である。 太極拳というと一般的に健康法的拳法と思われているが
実際に戦闘するととんでもなく強い。我々が護身用にかじる合気道太極拳の中から護身に利用できるものを
チョイスしたものであると言えば、太極拳の実態が見えてくるであろう。
一方で、閻魔様の拳法は無銘の拳であるといわれる。
閻魔様は裁きを下すとき、納得がいかずに飛び掛ってくる人間もいると言う。
閻魔様はそれを叩き潰してしまう。 
おおよそ人間離れした力で、といっても妖怪の類なのだから当然と言えば当然なのだが。


口火は美鈴氏が切った。動きが緩慢だと思っていた太極拳だが動くととんでもなく早い。
攻撃はクリーンヒットしたように見えたが、閻魔様は全く効いている様子がない。 
丹を練っていることで下半身が極端に安定しているから体勢が崩れないのだ。 
だが美鈴氏もさるもの、深く身を縮めて崩拳を繰り出してくる。
閻魔様はそれを右へのステップで体の軸をずらし、美鈴氏の心臓目掛けて発剄を繰り出した。 
当たっているはずだし、普通の人間なら確実に内臓破裂しているのだが美鈴氏は殆ど後ろに下がることなく、
間合いを変えぬまま体勢を整えている。


こうした戦いが30分続いただろうか。
急に二人が肩で息をしだした。 いきなり疲れたからこれでおしまいとか、
久々の実戦でペースが狂ったとかと言っている。
よくわからないまま戦いが終わってしまった。
ボスが様子を見に来たのは数分後のことである。 二人の様子を見て、二人とも無茶はできないものね。
と言うと二人に紅茶を差し出した。
私はその間、門番代行である。 メイド長に見つかったら速攻殺されそうな予感だが、
今日は自分の幸運に感謝であった。 また、二人に逆らうのも危険ということがわかっただけ大きな収穫である。