▼月 ◎日 No178 決算に向けて在庫を減らしましょう


三途の川の渡し船はてっきり魔界で作られているとおもったらうちの会社でやっていたらしい。
決算期なので倉庫の中身を減らすべく、ひさかたぶりに三途の川へと商品配達する。
船と言っても普段は輸送用カードの姿をしている。
展開時は年代物の船の姿をするのだが実態は一種のフィルタリング装置である。


閻魔様では、沢山の死者をさばく事が難しいため死神が閻魔様に裁いてもらう魂を先にふりわけてしまうのだ。
阿礼乙女が、財政難だから云々とぼやいていたが関係者は失礼だと憤っている。
彼らは阿礼乙女が思っている以上に近代的なシステムをとっている。
三途の川を渡れるかどうかで魂の選別を行うことで最終的なコストダウンを図るのだから、予算は寧ろ潤沢にある。
そうでなければ小野塚氏は今頃リストラか、人員不足でもっと忙しいはずである。


死者の中には科学技術の所為で無駄に寿命が長くなった結果、精神の死に直面したものもいる。
こうなってしまうと死神の裁量で意味消失させる。
死神は冥界の維持費削減の最前線なのだ。


久しぶりに会った死神の小野塚氏は相変わらずの風体である。 
目のやり場に困るが本人もさほど気にはしていない。
ふたりきりになったら耐えられない男もいるのではと聞いたことがあるが、
大体はその前に船から投げ出されると言う。
魂が光陰に移されて希薄になったとは言え、おしゃべりなやつもいれば助平な幽霊もいる。 
幽霊もまた多様である。
展開された船は、今までの船とあまり変わっていないように見えるが、
よく見ると彼女デザインの刻印がなされていたりして 意外と個性が認められていることがわかる。


刻印の中に「兄弟船」とか「御意見無用」とか書いてあったような気がするが、指摘すると命の危険が
ありそうなので、そそくさと帰ることにした。