はじまりは犬だった。人類の化学の発展のためにたった一匹で宇宙へと旅立った犬が消失した。
はじめは大気圏の再突入や何かの衝突によるものと考えられていた。
だが、妖怪たちはそれが月に棲む知的生物によるものであることを知っていたのである。
当時妖怪の一部は、宇宙開発のスポンサーとしても名を連ねていた。
それは市場である人間の世の中の活力のためであり、開発しようとかという計画は殆どない。
安住の地である幻想郷を手に入れた妖怪たちが月へ侵攻する理由はもはやないだろう。
隙間妖怪は博麗大結界の維持に忙しいし、他の血の気の多い妖怪たちは姿を消している。
よく月へ基地をつくる構想が無知な政治家から挙げられるが、
これは概ね資金調達のための方便に過ぎない。
月で土木工事などやった日にはべらぼうにお金がかかる。 まだ宇宙ステーションのほうが安上がりだ。
人類は月へと到達したが、その時わが社の記録によると月の結界が一時的に自壊しはじめたらしい。
多くの月兎が脱出を試み、何匹かは我々のところに到達したがいずこかへ消えてしまった。
これは仮説だが、幻想郷の月兎程度の者が逃げ出すような状況である。
月面は本当にろくでもない状況になっていたのだろう。 デマコギーが支配する隔離空間の中で
人を狂わせる能力を持つはずの月兎達が自ら狂っていくとしたら世話がない。
こんな話になったのは閻魔様にブレザー兎に対するアドバイスをどうするかと相談を受けたからだ。
供養しなさいというと勝手に殺すことになるし、団子でも供えたらと言ったら
幻想郷ではもち米が貴重品だからそれは難しいと言われた。
真ん中をとって丸いものをお供えしなさいにすればいいだろうというボスの意見が採用になった。
ただ、私にはブレザー兎がボスや隙間妖怪にとって適宜利用可能な駒という上白沢の意見がどうも気になるのである。