うちの会社の取引先が急に取引停止になったらしい。
取引先の社長宅に借金取りが押し寄せたのだが、その時債権譲渡をかけられ
うちの会社に直接売掛金を請求に来たらしい。
返済者がお金を返せないで金融機関の人が途方にくれた場合、その中に
債権を安く買い取る連中がいる。
債権者は少しでも帰ってくるならそれで良いといって債権をたとえば
一割くらいで売る。 そしてその集めた債権を回収することに成功すれば、
大もうけとなる、そんな理屈である。
さて、その債権引き受け会社の方二名はビジネスマンの風体で一見すると
危険そうな雰囲気はない。
だがその態度は横柄で、応対しようとした北白河の背中がびくりと動いた。
ところがボスの姿を見るや、「姉さんのところか」と言うと態度をぐるりを変えた。
この展開にさすがに私も北白河も唖然としてしまった。 彼らの処世術の一端を見た。
ボスは北白河を呼んでうちの会社の売掛金を清算する。
うちの会社の経理部の部長もやってきた。
当然の如く北白河はおびえた表情のまま固まっているが、ボスは表情を変えず
大丈夫だから安心しろと言う。
「ボス相手に荒事なんか始めたら命なんか幾つあってもたりません」
金融機関の人はそんな冗談を言っていたが、冷静にあたりを見ると確かにここを制圧するには
一個師団は必要かもしれない。
全額を現金で支払うと、この件でうちの会社は一切関知しないという念書を書いてこれにて終了である。
帰る二人を尻目にボスと朝倉が「パージが遅れた」とぼやいていた。
会社が倒産するとこういうような事態も起こりうることは大いに参考になった。
この会社、隙間妖怪の化粧品を取り扱っている小さな工場だったそうだが、債権の代わりに
もっていったであろう化粧品をちゃっかり安く仕入れいていた。 恐るべき世界である。