朝倉が、世界最初に結界を生み出したという者に会わせてくれると言う。
私はてっきり隙間妖怪のことだと思っていたからびっくりした。 隙間妖怪以上の大物がいるのだろうか。
なんともいえない緊張が走った。
しかもその者はすでに我々の会社にいるというのだ。 洒落になっていない。
一時間が経過したであろうか、必死こいて部署の掃除をしていると、朝倉がフラスコを持ってやってきた。
朝倉は切り出した。 「さっきの件だけど」と言ってフラスコを部署内の人間に見えるように掲げた。
朝倉が見せたそれは緑色の液体である。 それは藻のようにも見える。
高位の妖怪は自分の姿かたちをかえることができる。 不定形の妖怪なのだろうか。
その藻のようなものの正体は「藻」であった。
その名は「シアノバクテリア」この星で最初に酸素を生み出した生物である。
社員の中から落胆にも似た声が聞こえた。そんな態度にでた社員を朝倉は睨みつけた。殺気に満ちた妖怪の目である。
シアノバクテリアは、我々が生きるために必要な酸素を生み出しただけではなく
この星に生命を護る「オゾン層」という結界を生み出した。
オゾン層がなければこの星に住む生命の大半が死滅してしまうだろう。
我々はシアノバクテリアによって生かされているのだ。
古来生命は自分が生きるための結界を自分で作り出してきた。
不毛の大地だった地上を安定した環境にしたのも生命の力だった。
我々も隙間妖怪ですらやっていることは、シアノバクテリアと変わらないのであると朝倉は説いた。
幻想郷で仕事をしていると自分が特別だとつい錯覚してしまう。 だが自分たちの仕事はあくまで
妖怪たちの住処を維持する仕事であることを再認識させられた。