○月 ×日  No336 真実を写す鏡?


幻想郷でガラス鏡と言ったらとても高価な代物である。
当時まともなガラス職人が堺に集中していたため結界で分離された途端に
入手が困難になってしまったためである。
香霖は結界の外からやってくる外の世界の鏡を売って結構ぼろ儲けしたことを自慢していた。


しかし鏡というのは非常に危険な代物だ。
たとえば紫鏡なんかはそうだ。 あの八雲紫の「紫」を冠している
危険極まりない代物である。
鏡は現実を映すものであり、しばしば事故を引き起こす。
鏡を売って儲けられるのは香霖だけの特権だと思って間違いないだろう。


最近は我々が板ガラスを霧雨店に卸すようになったのでこうした鏡に関する
トラブルは激減した。
ちなみに幻想郷で販売している鏡はみな耐食鏡である。
迷信が蔓延りやすい幻想郷において、普通なら劣化現象で片付けられる鏡につく錆が
幻想郷では呪いなどと解釈されてしまうからだ。


本当は米帝からセンスのいい鏡を納品したいのだがあそこの鏡は
しばしば歪んで非常に困る。 
新入社員がメイド長に納品した姿見では、ちょうど胸の部分が歪んでいて
大きく見えるらしい。
メイド長に殺されると思ってヴァンパイアの主人を説得して交換しようとしたら
「欠陥は断じてない」と力説されてしまい無理やり返されてしまった。
真実を映さない鏡も時には必要だと感じ入る次第である。