○月 △日  No372 人形遣いのアリス


人形遣いのアリス 彼女は昔から人形を使っていたわけではない。
朝倉に言わせると有り余る魔力の制御方法を模索していくうちに人形を制御する方向に
傾いたらしい。
彼女にとっては捨食の術も、自分の魔力のはけ口の一つに過ぎない。
魔法使いでは先輩に当たる朝倉に言わせれば、次の段階の制御段階に
移行するまではこうした状況が続くらしい。
出力にムラがあるため、人形の制御に集中しないといけない瞬間がある。
こうなると会話ができなくなるので、彼女はしばしば変人扱いされる。
この点がよく誤解される原因となっている。


今日、ヴィヴィットをアリスに引き合わせることにした。
ヴィヴィットの実用化に当たっては人形の専門家に評価を委ねる
必要があったからである。


出かけようとすると、ボスが封筒を手渡した。
アリスの説得材料ということらしい。


本人には会うことができたが、アリスは案の定求めに応じない。
所謂ゴーイングマイウェイ 面倒なことはほとんど引き受けないのは
こちらも承知していることだ。
そこで例の封筒を渡してみた。 封筒の中身は引き延ばされた写真が
入っているようだ。 中身をちらりと見るとアリスは態度を急変させた。


さっそくヴィヴィットを観察してもらう。
アリスはヴィヴィットの胸に手を当てた後、耳を近づけしばらく
目を瞑っている。
そういえばあの松下幸之助も機械に対して同じようなことをするのを
思い出した。 似たような術でもあるのだろうか。


結局、ヴィヴィットの評価はそこそこといったところだった。
戦力とするには少々心許ない部分がある点はこちらも認識している。
そして、私は一番気になっていた質問をぶつけてみた。
ヴィヴィットがメディスンと同じ道を歩まないかということだ。
この点についてはアリス自身もよくわからないと答えた。
実際メディスンが魂を得たプロセスが未解明な部分があるため
仕方のないところだろう。


帰宅してボスにアリスにいったい何を渡したのかを聞いた。
それはIRシステムが捉えた霧雨のご息女の写真らしい。
そんなもので買収できるとはアリスの性格は正直わからない。