□月 ○日  No534 督促してみよう


新年のごたごたが一段落したと言うことで姫ちゃんこと閻魔様が死神を引き連れて久しぶりに
会社に顔を出した。 少し遅い新年の挨拶を済ませ、お汁粉を飲んで貰う。
甘味は閻魔様だろうが死神だろうが呑兵衛だろうが心を和やかにするものだと思う。
ビールを飲みながら仕事をしている浅間の姿を見つけて怒り出す閻魔様をなだめるのに
とても苦労した。 


ボスが紹介した酒場の板前さんから治療費の請求書が届いていた。
骨折2カ所擦り傷切り傷で全治一ヶ月程度らしいが、仕事はそのまま続けているらしい。
この人は、軍隊上がりで小兎姫も対妖怪戦で役に立ちそうだということで目を付けていたらしいが
いざ引き抜こうとしたら、酒場の板前に納っていたという困った人らしい。
結構危ない人と言うことで、引き抜き計画は白紙になったそうだ。


今日、閻魔様に来て貰ったのはボスが普段呑みに行っている酒場の女将と一緒に
お金を支払わない人のツケを督促するためらしい。
こんな事のために閻魔様を連れてくるボスもボスだが、酒場のツケを払わない程度で
地獄行きを宣告されるのはいくら何でも酷すぎるように思える。
酒場の女将は30過ぎの年齢を感じさせない綺麗な人で、督促の時はしばしば暴力沙汰を
起こすことで知られているのだが、世の中にはマニアがいるようで、お仕置き目当ての
困った人がいるらしい。
そういう困った人のために閻魔様の地獄のような説教攻撃で思考停止させて
ツケを支払わせようという魂胆だという。


朝倉が私の服を引っ張って、嫌な予感がするから運転手をしなさいと指示されたため
こちらも嫌々ながら同行する羽目になった。
二人の会話はまんま女子学生のものでまるで閻魔様とボスの会話から外れている。
隣に座っている死神は車酔いのためか、車内に酸っぱい臭いをまき散らす
爆破テロを繰り返している。
到着したときにはこっちも直下型ボムをかますところだった。


女将さんと合流していざ督促へ
外で待つのかと思ったら、死神さんと同行するように言われる。
デートみたいで少し良い気分だったのもつかの間、近所にベルを鳴らして
「ご迷惑をお掛けてしています」と挨拶して回る羽目になった。
近所の苦情に平謝りしていると、隣では物凄い怒号とガラスが割れた音が鳴り響く。 
こんなことをしたら捕まるのはこちらの方に思えるのだが
誰一人として通報する者はいない。
近所の人に事情を聞いたら、プレイの一部だと言われた。 駄目だこりゃ。


閻魔様の活躍というか単に督促そのものが目的であってお金の支払い能力があるためか
集金は普通に終了。 一緒に貰ったのは近所の家からの請求書だった。
彼らはもしかして閻魔様目当てでお金を支払わないのではないだろうかとふと思った。
どいつもこいつも変態ばかりである。