□月 □日  No638 東方地霊殿発表記念2 地底ドリルがやってきた


久しぶりに香霖のところへ冷やかしにいってみたら、巨大な鉄のかたまりが敷地内に置いてあった。
ごくたまにだが香霖堂にはデカ物系のものが入荷する。
怪力自慢の鬼娘が拾ってきてさんざ弄くり回した挙げ句飽きて、香霖堂に売りに来るのである。
香霖は二束三文の価格でこれを買うが、河童がそこそこの金額で買ってくれるから
とりあえずは儲かる。
鬼娘はそのお金で甘味処でお団子を買って博麗神社に遊びに行く
もっとも今日は主が居ないからたぶん違うところへ行っているのだろう。
その気になればロケットに合流して団子を食べることだってできるに違いない。


中にはそれなりに価値がありそうなものや、巨大兵器も漂着する。
これらは物資が少ない幻想郷にとってこれらは貴重な資源となっている。
この前も香霖が頭から血を流していて何事だと思っていたら、
外で運転しようと試みたのだろう乗用車が木にぶつかってスクラップになっていたという
凄い光景も目撃している。
せめて一言言っておけば多少は乗り方を教えることができるのだが、
私が来ると奪われると思っているのか完動品になると殆ど教えてくれない。


香霖堂に様子を見に行ったら、またおかしな商品が入荷した。
香霖に聞くとそれは地底ドリルと言う乗り物らしい。 これがあれば自由に地中に潜れるという。
しかし本当に乗ろうとはしない。幻想郷の地下に何があるか興味が無いわけではあるまい。
もっとも私はこの地底ドリルが地底に潜れないことを知っている。


香霖も私の態度からそれが本当は役に立たないことを察知したようだ。
このドリルは穴を掘り始めたら、ドリルが突き刺さった瞬間に回転するのはドリルじゃない
車体の方である。 そしてこのまま人間ジューサーになる。
香霖の体が砕かれても喜ぶのはルーミアくらいなものだ。 ヴァンパイアの主人も喜ぶかも知れない。


もっとも仮に地底に辿り着いても我々はあまり歓迎されないだろう。
地底は生命にとって避難所であったらしい。
かつてこの星から海が消えたとき、生き物に生きるための場所を提供したのは地底だったそうだ。
だが時は流れ、かつての住処だった記憶を忘れて人々は勝手に忌むべき場所だと決めつけたのである。
温泉はその姿のわかりやすさから、安らぎの場所とされているのに何たる身勝手であろうか。
そんな無礼を働いた我々を地底の住民達が赦してくれるのかは正直怪しい。


結局連絡を受けた河童達がドリルを解体しながら回収してくれた。
ドリルの姿を一瞥すると、残土処理と廃熱処理が考えられていないゴミとだけ言われた。
とりあえず、解体時に発生したゴミを処分して今日の仕事は完了。
香霖もそこそこのお金を手にして一件落着である。