顕界における博麗神社耐震工事の工程表が設計事務所から届く。
これをボスや隙間妖怪たちにより吟味されて発注が行われる仕組みだ。
ここ最近、顕界では地震対策基準が厳しくなっている。
博麗神社の改築工事も例外ではなく、新たに国の基準を満たすだけの補強工事が必要となった。
博麗神社のように構造にまで謂われがある建物では、外観を維持しながら新建材を用いる工法でも
リスクが生じてしまう。あまりに派手に工事をすると、神社のとしての機能が失われてしまう可能性がある。
そこで神社をジャッキアップしそこに免震装置を組み込むやりかたが採用された。
免震装置とは、地震の衝撃をダンパーなどによって吸収するものである。
免震と耐震では基本的な考え方が違う。
耐震では構造体を強化したり建物を新建材を用いて軽量化したりして地震について耐えられるようにつくる。
通常耐震では、下から突き上げる揺れ対策に金物を用いて、横からの揺れに対しては耐力壁とよばれる
壁を増設する工事がいる。
ところがこのやり方では博麗神社の美観を損ねるばかりか、部屋割りの変動まで起こってしまい
霊的防御力を損ねてしまう。
部屋割りを変えなければよいと思うかも知れないが、耐震壁工事では構造上バランスよく壁を配置しないと
弱いところに力が集中する結果となるので難しくなるのだ。
一方免震は耐衝撃ダンパーが力を分散してくれるので、建物を特に補強しなくても
揺れそのものを回避することができるメリットがある。
しかし免震工事もそう簡単にはいかないらしい。 ボスに聞いたら幻想郷にある神社が二回ほど霊的に無防備になるとのこと。
一つは免震装置組み込みのために、神社を引き屋といって構造そのままで移動したとき、
もう一回は免震工事が終わって神社を元に戻すときだ。
霊的防御が損なわれている時に博麗神社に何かが起こったら、最悪結界維持にも影響を及ぼす可能性がある。
それは絶対に避けねばならないことだ。 どうやって二度の危機を回避するか、うちのメンツも集めて集めてみんなで考える。
眠気覚ましのコーヒーを出しては見たものの浅間が寝ながら考えていたりと、みんななかなかアイデアが出ないまま
時間ばかりが過ぎてしまった。 珍しい光景である。
こっくりこっくりと船を漕いでいる浅間を観察していると、出されていたコーヒーカップに頭をぶつけた。
浅間が逆ギレして、「最初からコーヒーカップなんか置くな」と文句を言う、周囲が睨むような目つきで浅間を見つめたが
一緒に参加していた岡崎が「それだ」と叫んだ。
岡崎曰く、博麗神社が無防備になるのなら、神社の機能を破壊しない程度に倒壊させておけばいいというのである。
たしかに先に倒壊してしまえば、これ以上どうこうというわけではない。
額に絆創膏をつけた浅間、さっきの文句はどこへやらそれで行こうと岡崎の案に賛成した。
みんな結論が出ない会議なんかさっさとやめたかったからなし崩し的にそうなった。
博麗神社をどうやって倒壊させるかについてはボスに心当たりがあるとのこと。
堅牢な博麗神社をどうやって倒壊させるのか、今から気になるところだ。
鬼や隙間妖怪には期待できないのでまた色々考えないといけなさそうである。