□月 ●日  No725 異変前夜


博麗神社の工事に伴い。鬼娘と打ち合わせ。
本人はちょっとした悪戯と思っており、割と和気藹々と進む。
彼女にはきちんとネタばらしをしている。
そもそも嘘がある場合彼女の協力を仰ぐ事なんてできないからだ。


博麗神社の霊的防御が解かれれば地震でも神社は倒壊してしまうだろう。
すでに重心計算で博麗神社がどういう揺れなら望む壊れ方をするか
だいたいの評価は済んでいる。
最近は手の届く値段で耐震計算ができるのだから有り難い。
安い奴なら本を買うくらいの値段で買えるのだからいい時代になったものだと思う。


比那名居の娘の発想から考えるなら、手っ取り早く幻想郷に混乱を呼びたいと思うはずだ。
そうすれば震源地は博麗神社付近になる。
予定では最初に到達するP波により博麗神社の基礎部分が真っ先に破壊され、続いてやってくる
S波により柱が次々と倒壊して、ちょうどだるま落としのように屋根を残して
神社が倒壊する。 屋根と鳥居が無事なら神社の機能は破壊されないで済む。
そしてそれからどうなるのか、比那名居の娘が色々と犠牲になるかも知れないが
その点はボスが調整してくれている はず。


鬼娘によると博麗神社は伝統工法によって造られている。 柱はかなり太く、沢山の梁によって
耐力を稼いでいる。 多少の歪みがさらに梁同士の締め付けを強めて結果的に
建物の耐力が向上する。 つまり博麗神社は変形を前提とした工法で作られているということだ。
耐力壁によって地震を耐えたり、免震装置によって地震を耐える現代工法とは一線を画する。


ボスによると 今回も 鬼達に博麗神社再建を依頼するらしい。
費用は政府3 当社4 残りは幻想郷の割合となる。
ただ、霊的防御の復帰は隙間妖怪が取仕切ることになっている。
彼女がうんと言うまでは顕界から霊的防御をONにしてはいけないことになった。
完成した神社にバグがあったら、再び解体しないといけないかららしい。
それだけ博麗神社は重要な霊的拠点であるとともに、莫大な費用も動く場所と言えるだろう。


鴉天狗が神社に何か起こるのかと尋ねてきた。
なんという早耳だ。 呆れて舌を巻く。 精一杯惚けてみせたがなかなか信用して貰えない。
おおかた神社の建設資材が妖怪の山に届いているのを見たのだろう。
もしくは建具屋に新しい扉の発注をしたのが漏れたと思われる。
「博麗の巫女も教えてくれない」とため息をつく鴉天狗。
まあ、彼女は何も知らないのだから当然だろう。


結果3時間近く粘られて本当に疲れた。
これだから鴉天狗に関わるのは嫌なんだ。