□月 ●日  No730 幻想郷民は収納下手


河童と一緒に香霖堂へ乗り込む。
いくら整理してもすぐに元に戻る香霖堂をなんとしてでも整理するのが目的だ。


はっきり言って一般の幻想郷の住民は物の整理ができない。 
これが最近私が達した結論だったりする。
香霖堂のあのカオス具合も結局はとりあえず物を収納しないからに他ならない。
もちろんこれは香霖の責任ではない。 幻想郷がもとよりそういうところなのだ。


そもそも幻想郷に収納家具のバリエーションが少ない。
一番ポピュラーなのは箪笥であろう。
紅魔館に収納家具があるが、どちらかというと調度品の意味合いが強い。
顕界では収納家具がもてはやされているのと対称的だ。
博麗神社も意外と物がない。 物で溢れているのは一部の商家とか
拾い物でグダグダになっている香霖堂とか、紅魔館の図書館とかそういう特別なところだろう。


だから幻想郷の住民に物を整理しろと言ってもなかなか上手くいかないのだ。
そもそも沢山の物に出くわす機会もないし、整理する訓練をしているわけでもない。
仕事道具を整理することは一応あるがせいぜいそんなものだろう。


香霖にもっと収納家具を増やすべきだと言ったら、
収納したらどこに仕舞ったのかすぐにわからなくなると言われた。
だいたいそんな感じなのだ。
あっても棚板程度の整理しかできないのだからたまらない。


しかし、幻想郷でも当然のごとく例外がいる。
ひとりは天狗。沢山の写真や記事を整理できる。
そして河童。解体した部品を整理するのが上手い。


河童のリュックからはたくさんのマジックハンドが伸びていた。
元はきゅうりを盗むもとい、もぎるために作った物らしい。
その手にはインパクトドライバーとコーススレッド。 まさか河童がそいつを持ち出すとは
かなり意外である。


コーススレッドは顕界の万能釘。インパクトドライバーで強引にねじ込める木工マニアの味方だ。
河童の話だと故障していた物を修理してリサイクルしているのだそうだが
便利で重宝しているらしい。もっとも幻想郷にあるだけにバッテリー駆動ではないのがご愛敬である。
電力はどこから供給するのか河童に尋ねた。
ニコニコしながら指し示した先には香霖堂に置いてある緊急用発電機があった。
人呼んで人力という。


沢山の収納棚が作り上げられて香霖堂は整理されたが
香霖と私はグロッキーになってしまった。
夏場でいい運動になったといえばなったかもしれない。
夕方に冷えたスイカをご馳走になって今日の業務はおしまいである。
疲れたからさっさと寝る。