□月 ●日  No761 運び屋と幻想郷


幻想郷から外の世界すなわち顕界への物流は基本的に認められない。
税関で登録したものか、中間管理職狐が認めたものだけが認められる。
対して無防備なのは知識の流出である。
中には知識の流出を狙って幻想郷から顕界に脱出しようとする者がいる。


かなり難しいが博麗の巫女を頼り、彼女の力でどうにか外に出れば
一応不可能なことではない。 所謂運び屋と言われる人々で
幻想の技術を得たいと思う者もいれば、我が社が幻想郷に正しく物資を運んでいるのか
そして隙間妖怪が裏切っていないかを確かめるためとも聞いている。


脱出を図ればだいたいうちの会社の網にかかる。
先回りして確保、物的証拠だけを奪っておけば彼らの証言なんて誰も信じない。
別のクライアントなら、うちの対応は至極当然だと分かっているので何も言わない。
彼らはあくまで情報が欲しいのだ。


もちろん何かしらの金儲けが目的の輩もいる。
彼らに対しては基本的に容赦しない。
ノーレッジ女史の図書室から本を盗み出し、顕界で売ろうとしていた奴は
霊能局の手によって強制送還となった。
売ればそれなりの財を成したであろうことは間違いない。
おまけに送還されると外の世界の人ということで、妖怪たちに食べられるリスクもある。


今日も幻想郷から物品を持ち出そうと試みたスパイが捕まった。
博麗の巫女が送り出した人がまた送還させられたと知ったらどう考えるだろう。
ボスは暗殺されないだけマシと言っていた。


結界の突破方法如何では例外も存在する。
かつての岡崎と北白河はまさにそうだった。
自力で船を駆り、自力で結界を突破してしまったため、
発覚が遅れたのである。
この当時隙間妖怪は彼女の行動を見て天晴れと言われたらしい。
その後彼女たちの争奪戦が始まり、殆ど拉致同然のやり方で我が社が勝利したそうだ。
当の本人は自分たちの研究の真の意味を知って嬉しいやら怖いやら複雑な心境だった
ことは言うまでもないだろう。


ここには続きが存在する。 岡崎が用いた結界突破方法は先の月面戦争で
月兎が用いた結界突破方法と殆ど同じだったそうだ。
お陰で我々は異変にいち早く気づいたわけだが、岡崎は月人と同じ結論になったのか
なにか私の知らない知識が用いられたのか。
それはボスと岡崎だけが知っていることのようだ。