□月 ●日  No980 氷妖精のはなし


氷妖精にお菓子をねだられる。
嫌という理由もないのでとりあえず飴玉を上げておいた。


氷妖精と言えば幻想郷ではとてもポピュラーな妖精の一人である。
夏になっても紅魔館を涼しく保っているのも彼女のお陰であるし、彼女のもたらす弱冷気が
ワインの醸成にとても役立っている事実は幻想郷に住んでいる酒好きなら常識である。


顕界にも氷妖精は存在する。 氷妖精は完全に幻想入りしていない種類の妖精として広く知られている。
もっとも顕界における氷妖精はとても畏れられた存在だ。
なにしろこの氷妖精は、結果的にとはいえ軍隊をも退けた経歴を持っているのである。
謂われとしてはこれほど凄い物はないだろう。


私個人として氷妖精はとても苦手なタイプに属する。 
一般に頭が悪いと言われている氷妖精だが、実際はかなり違う。
計算の類は苦手であるが洞察力の高さは天下一品と言っていい。そのため嘘を見破る能力に長けており
こちらが使う口先八寸があまり役に立たない。
強いて言うなら買収が有効だが、こちらの目的を看過されてしまうことも多いので
取り扱いがとても難しい。


本質を見極めることができるということは表裏がないということである。
だから氷妖精には友人が多い。 こちらも表裏なく普通に接すれば決して危険ではないと思う。
危ないのはむしろ三月精のほうではないだろうか。 こっちは口先でやり合えるからまだマシではある。


とりあえずお菓子を渡すときは必ず大目に渡すのがセオリーであることを覚えておきたい。
なぜなら彼女がお菓子をねだるときは必ず近くに友人が居るからである。
そこを巧く配慮できるかどうかで彼女との付き合いかたが分かるだろう。


もっとも一個だけお菓子をやっても大抵半分にするので是非観察するといいかもしれない。
もちろん失敗して皆で泣き出すのだがそれはそれである。