□月 ●日  No1167 氷妖精 科学のイノベーションとなる


うちの会社はスペルカード製造も委託でやっているわけだが、最近開発部がご執心なのは
氷妖精であるチルノの研究である。
彼女は一般の妖精と違い、きわめて知能が高いことで知られる。
一般的なやられ役妖精をみればその差は歴然としているだろう。


しかしチルノの最大の能力は環境に左右されずに冷気を出すことにある。
これはとても興味深い特徴だ。
氷雪を司る妖怪であるレティ・ホワイトロックは出現場所を環境に依存する。
しかしチルノは違う。 どこにでも現れ、どこでも行動できる。
特に地下深くの摂氏40度を超える高温にも耐えられたという報告もある。
ここまでくると並の妖怪よりも始末が悪い。


環境に左右されないというのはとても変わった特徴である。
基本的に冷気を発生するには熱交換を用いるのが一般的なやりかたであるが
熱交換では一方で冷気を放出すれば、高温を廃棄しないといけないという問題がある。
これはエネルギー保存の法則を考えれば当然のことだ。


しかし氷妖精はエネルギー保存の法則を無視して冷気を放出することができる。
一説には分子の活動を微妙に落とすのが氷妖精の本来の能力ではないかという研究結果もある。
そこで発生する膨大なエネルギーも冷気の発生におけるコンプレッサーのような役割をとることになる。
閻魔様が力を持ちすぎるというのは、当然の指摘なのである。


さて、氷妖精研究の最大の成果は間違いなく灼熱妖怪だろう。
「蓬莱の薬」に頼ることなく、自分の発生する熱から身を守る為の手段として氷妖精の研究結果が
活用されているらしい。 当初はメトセラ娘へのバックファイアー対策に考えられたそうだが
今では灼熱妖怪の維持の為に使われているそうだ。
うちの会社在籍の妖怪の力を手に入れたという灼熱妖怪だが、自爆対策はいろいろととられているらしい。


灼熱妖怪には緊急用として特殊スペルカードが存在している。
エターナルフォースブリザードとかいう謎のカードは灼熱妖怪が暴走状態に陥り、ヘリウムよりも重い
物質を核融合してしまう状況に直面したときに発動するのだという。
もちろん使用したら術者は確実に死ぬ。 自分を強制冷却するための最終手段らしい。


幻想郷研究の世界ではこのように妖怪たちよりも妖精たちの研究がより多くの結果を得られるといわれる。
妖精たちもまた人類の科学の発展に役立っているというと、なんとも色々複雑な気持ちになる。
お菓子をむしゃむしゃ食べている妖精たちをみてそう思うのだ。