□月 ●日  No1721 薄れゆくもの


ネット転載天狗の差し金かどうかは知らないが自称現人神が自分の持っていた携帯電話を
幻想郷でも利用できるようにしてくれと言う話になって社内で混乱が広がった。
はっきり言って彼女が幻想郷から電話をした場合、確実に言えるのは
幽霊から電話が掛かってきたってことくらいか、会えない理由を言って終わりかって
ところだと思われる。


ネット転載天狗の様に顕界とつながりが薄い妖怪ならあまり問題にはならない。
月人たちは元々そこまで顕界に興味はないしかし、自称現人神は違う。
結論はNOだった。


しかし、例の神社に納品に行ったらなんと自称現人神が携帯電話を弄っていたではないか。
そんな馬鹿なと思って、電波受信状態から探ってみるとなんと契約者は顕界からやってきた
山彦妖怪「幽谷 響子」と判明。
何が驚きかって彼女はちゃっかり自分の口座を顕界に用意していて、自分所有の山林を
売って携帯電話の代金に充てていたのだ。


しかし、幻想郷にたどり着いて命蓮寺に行ったら携帯電話は不要になった。
そこで彼女はどうしたのかというと中に入っているSIMカードだけを自称現人神に貸したのだ。
上手いとしか言いようがない。


しかもだいたいの連絡も取っていたことも判明。ノーマークだったので
すべてが後手後手である。 後の祭りだ。


しかし、数日たってなんと自称現人神はSIMカードを山彦妖怪に返したらしい。
自分には不要になったという。


理由はおおむね理解できる。幻想郷に長くとどまった場合、顕界との縁が薄まるのだ。
何ヶ月も何年も経過すれば顕界に住んでいる人たちにもそれぞれの暮らしはある。
溝は深まって当然破綻する。 自称現人神は自由業かもしれないが友人は塾や勉強をしたり
または恋しているかもしれない。 それが真実だ。


結果的に丸く収まったが、少々残酷な気がしてならない。
そして何より残酷だったのはそれを例の神社のおねえさんが敢えて放置していた事実であった。
いつかは知って貰わないといけないことではあるが仕方ないと言えるのか。