□月 ●日  No2078 取引価格ゼロ


幻想郷に医薬品を持っていくというのは結構大変である。
普通の薬品なら別に問題はない。危険物の場合は気を遣うがそれほど問題ではない。
しかしながら幻想郷では医薬品に関する制限なんてないから、たまに薬屋がほしがるものが
違法な代物だったりする場合も多い。 
例えば、医療用の大麻あたりがそれに当たる。幻想郷では割りと魔術の
術者が利用することも多いため、色々と面倒なことになる。


幾つかのものについては幻想郷内部で自給して貰うことになる。
もちろん、かなりの制限を加えた上だがこうした薬品類は結構な種類存在する。
その辺の事情は薬屋も承知している。彼女はその気になれば幻想郷を麻薬漬けにすることも可能だろう。
そんなことをしたら勿論取引停止になるのだが。


しかしながら一方で、薬屋の働きかけによって違法となった薬物もある。
それが合成麻薬関連だ。当時合法だった合成麻薬を調べた薬屋がすぐに麻薬の幻想郷入荷
禁止を決めたのは関係者にとっては想定外のことだった。
あのとき、薬屋に導入しない理由を聞いた社員が製薬会社に伝えたところ、あっという間に
合成麻薬の類が禁止薬物になったことはその筋の人間には有名な話だという。


最近では、試作の薬を送って副作用を確認して貰う代わりに自社の薬品をすべて無償提供している
製薬会社も存在しているという。
後で問題が発生したらということを考えると、製薬会社にとってはこれほど安上がりなことは
ないといったところのだろう。


そのため薬屋の取引金額は想像以上に安い。まるで保険でも適用されたかのような価格で
提供される。 故に薬屋の病院は低所得者向けにも開放されて、高いお金を要求しないため
経営が毎度毎度綱渡り状態になるのだが、安く薬が入るのだからそれで良いと言うのが
薬屋の意見のようだ。 


今のところは丸く収まっているのでこれ以上とやかくいう理由はない。