□月 ●日  No2236 私からもお願いします


メリーがとても厳しい顔をしていて印象深い。
それもそのはず、魔術の癖を思いっきり矯正させられているのだそうで、今まで書籍を参考にしているとはいえ事実上の
自我流だったのでかなり大変なのだという。
朝倉に言わせれば、トリフネにおける事故などは命があっただけでもめっけものであり、あまりに無謀すぎる行為だという。
確かに、命綱なしで高さ数メートルの平均台を渡れよという意味でもあるからそりゃいい加減にしろよと言いたくもなる。
二人は自称現人神と違い師事を受ける人物に恵まれなかった(というと岡崎の視線が痛いが)ことを考えると
致し方ないと思うこともある。


ちなみに岡崎はというと意外に思われるかもしれないがスポンジのように魔術技術を頭に叩き込んでいた。
これは実践派と理論派の違いだそうだ。岡崎はまず理論的に有利であるなら手癖はあっという間に補正してしまう。
朝倉の使う魔術は科学的に体系化されており、無駄が殆どないのだという。


そんな朝倉の魔術にはベースとなっているものがあるらしく、それは大師様の魔術なのだとか。
よくよく考えると彼女が持っている経典をコンパイルするのにとても有利な構造をしていることに気が付く。
所謂オブジェクト指向と言われるプログラム技法であり、実のところ異様にシステマチックなのである。


さて、メリーたちが何故難しい顔をしているのかって。
それはもちろんコスプレを強要させられようとしているからだ。
朝倉本人は事故防止のためと強弁しているらしい。おそらく表裏がない彼女なりの優しさなのだろうとおもうが。


躊躇う彼女たちに周囲が お願いします お願いします と叫ばれてみんなが不機嫌になった。
そんな具合だそうだ。
朝倉は若い女には負けるという基本的ルールをきちんと理解した上で不機嫌になればいいと思う。