八雲商事
それは死者の社
この会社に赴くものは悉く死者となるという。
曰く 永遠の命を授けられる
曰く 無敵の肉体を授けられる
曰く 超人になれる。
という話だったが
目の前にいるこの男を見ると全くそうは見えない。
どう見てもその手のものとは無縁そうな
柿の種を頬張る中年男性の姿である。
サラリーマンというしかないその男が果たしてそんな力を持っているとは
いや見た目に騙されてはいけない。
きっと彼も死を超越した特別な人間である
そして圧倒的な力で我々を蹂躙することもできるだろう。
いや、この思考すら彼の前には読まれているかもしれない。
男は軽くあくびをして
「失礼」
軽く微笑み謝罪する。
どう見てもそうは見えないのだが。
いやだからこその余裕なのかもしれない。