□月 ●日  No3999 死者の社


 八雲商事
 それは死者の社
 この会社に赴くものは悉く死者となるという。
 曰く 永遠の命を授けられる
 曰く 無敵の肉体を授けられる
 曰く 超人になれる。


 という話だったが
 目の前にいるこの男を見ると全くそうは見えない。
 どう見てもその手のものとは無縁そうな
 柿の種を頬張る中年男性の姿である。
 サラリーマンというしかないその男が果たしてそんな力を持っているとは
 いや見た目に騙されてはいけない。


 きっと彼も死を超越した特別な人間である
 そして圧倒的な力で我々を蹂躙することもできるだろう。
 いや、この思考すら彼の前には読まれているかもしれない。


 男は軽くあくびをして
 「失礼」
 軽く微笑み謝罪する。
 どう見てもそうは見えないのだが。

 いやだからこその余裕なのかもしれない。