■月 ●日  No5036 

 「あら、久しぶりじゃない?」
 黄昏酒場にあるとある居酒屋。私は昔馴染みがやっている店に顔を出した。
 あれからとてつもない時間が流れたような気がするが店主に聞くと
 実は思ったほどには時間が経過していないことに気づいて愕然とした。
 なんとなく体調が良かったので、普段呑んでいる酒を注文すると
 案の定店主の顔が曇った。

 「ちょっと医者に止められていたんでしょう?」
 「いや、体調がいいんだ。医者にも、実はもう大丈夫だと太鼓判を押された。」
 あの事件以降、妙に体の調子がよい。 毎年通っている人間ドックを受信したところ
 ありとあらゆる数字が良くなっていると太鼓判を押された。
 まさに健康体といえる数字である。そういえば睡眠もとても安定している気がする。
 ちょっと寝れば簡単に疲れが取れるし、食べ物も妙に美味かった。
 私はあり得ないほど健康になっていたのである。
 長年悩まされていた持病もなくなり、虫歯すら消えてしまっていた。
 自分の体に異変が起こったのか? 改造デモされたのではないかと疑ったが
 人間ドックの結果は自分がホモサピエンスで特になにもないことを示すものだった。

 私の様子はあまりにおかしかったのかもしれない。
 私の顔色をまじまじと見た店主は、「もしや」
 と私に尋ねてきた。
 「まさかあなた、死神に会ってなかったかしら」
 「なぜそれを?」
 あまりといえばあまりの質問に私は変な受け答えをしてしまった。

 普通なら探偵失格だが荒唐無稽であるがゆえにスルーされるであろうと考えていた。
 それは甘い考えだったと思う。

 「正確には彼は死神ではないわ。彼の能力はリザレクション。
  蓬莱の薬なしで人間を矯正蘇生させる程度の能力というべきかしら。」
 「なんだって?」
 「あなたが異常なまでに健康になって戻ってきた。それが何よりの証拠よ。」

 多分本人が聞いたら呑んだ飲み物を吹き出しそうな過剰評価がそこにあった。