■月 ●日  No5126

 朝倉は嘆息していた。
 月面との戦争の中で戦闘の安定化と継戦能力の確保は絶対的なものだった。
 特に戦闘の安定化は喫緊の課題だったと言える。
 どんな妖怪にも「〇〇する程度の能力」というものがある。
 能力を拡大解釈すれば融通が利くとは言え、これは戦闘スタイルを
 容易にワンパターンにするものだった。しかし妖怪にとって自分が自分であるために
 この宣言を吹き飛ばすわけにもいかない。

 結局魔法使いと呼ばれる者が問題を解決しないとならない。
 あの聖は魔術による身体能力強化を提唱して実際、人間ではあり得ない寿命を
 得ている。もっともあの魔術は外法そのものであり、月面人に応用するのは
 危険極まりないものだ。ぶっちゃけ私はここにいますよって言っているようなもので
 自殺行為である。月面戦争はスニーキングミッション出ないといけない。

 すると自らの能力を魔術の力で繭をつくりそこに妖怪の力を移譲することで
 妖怪の能力をコピーしようという思想が生まれた。ないのなら借りればいいのだ。
 しかし、月面人に探知されない妖怪と言うのが至難である。
 そしてもっと根本的なことを言ってしまえば朝倉の力をもってしても
 怪異を完全再現とまではいかないのだ。

 再現するにはどうするのか?最初は能力を見よう見まねで、複製したが
 基本動作部分でロスが大きくなり、結局継戦能力が喪われる。
 つまり燃費が悪すぎる。 スペルカードによるパッケージング化でも
 維持できるのはせいぜい10秒程度である。まだ博麗の巫女のボムのほうが
 マシってもんだ。

 こうなってくると、次の手段は姿である。
 朝倉は妖怪の衣服を再現することから始めた。するとどうだろう。
 魔術変換効率が7割も向上したではないか。
 最初は羞恥心でどうにもならなかったが、この劇的な効果にほだされて
 朝倉此処で重大な過ちを犯す。

 これ、気持ちがいいじゃん
 目的と手段が逆転した瞬間だった。