◎月 ●日  No292 妖怪ネゴシエーション

結界の外で妖怪を使った万引き窃盗犯が跋扈している。
元締めは中国系といったところか。 
万引きした商品の価格の50%で買い取っているという。
捕まえても住所不定だし、「もし逆らったら幻想郷へ連れて行かれてしまう」
と答えているらしい。
霊能局からの依頼で説得して来いと言われてしまった。 
なんか人を妖怪交渉屋と思っているのだろうか。


その妖怪は化粧品を盗んだところを捕らえられた。
会ってみれば酷くおびえた少女である。
私はどうなるのですか?と聞いたので「恐らくは幻想郷に送られる」と答えたら
「なんでもしますから、それだけは赦してください」と言われてしまった。
毎度のやりとりなのだが幻想郷に関するイメージの悪さを痛感する。


呆れるのは人間が妖怪を騙してしまうということだ。
妖怪と言っても長い期間生きているとは限らない。 
妖怪の中には割と最近生まれた学校霊と呼ばれる類などもあり、
その実年齢は人間と殆ど変わらない上に世間知がないため
霊媒師を通して丸め込まれるケースがあるのだ。
その妖怪に今幻想郷で起こっていることを話してみた。 
暢気な博麗の巫女や騒音公害発生源の話、男漁りに必死な妖怪は、
幻想郷の妖怪ではなかったか、幻想郷にもいたか。
お前の盗んだ化粧品を隙間妖怪が使っていると言ったら相手も堪えきれずに笑ってしまった。
さすがに隙間妖怪の存在は彼女も知っていたようである。


こうした場合、幻想郷に行っても顕界に戻る方法を示唆すれば
結構説得に応じてくれる。
もっとも幻想郷に行った妖怪の大半は顕界に戻ることはない。
妖怪にとって幻想郷が暮らしやすい環境だと言うのは確かだからである。
彼女は今度の便で幻想郷に送り届ける予定。 
スペルカードルールを教えるのは朝倉に頼んでおく。