○月 △日  No365 ネットに潜む罠


魂魄が慣れない手つきでコンピューターを触っている。
いったい何をやっているのかと画面を見ると
なにやらファンシーな画面のサイトが開かれている。
どうやら女の子向けのコミュニティサイトのようだ。
まだ懲りていなかったか。


魂魄は「前回は失敗したが今回は間違いない」と自信満々だ。
端から見ると人畜無害そうであり
かわいい動物のマスコットがちりばめられているサイトである。
まさかここで出会い系サイトのようなやりとりがされていようとは
思うまいというのである。


魂魄が慎重に目標を決めた結果
朝ヶ丘 理絵子なるハンドルネームを持つ女の子と
おつきあいしているそうである。
魂魄がお前もやるかと言うが、直感的に危険な香りがするので遠慮しておいた。


彼はとうとう会う約束をとりつけたという。
場所は近所の駅である。 目印として胸に花柄のバッチをつけることに決めたらしい。
半ば投げやりに「がんばれよ」とだけ言っておいた。


数刻後電話が来た。今すぐ駅前に来いという。
なにやら慌てた様子だったので現地へ行くと、そこには胸に花のバッチをつけた
朝倉がいた。
魂魄が物陰に隠れてじっと様子を伺っている。


魂魄の携帯電話に「かわいい女の子じゃないか」と吹き込んで
さっさと帰社した。
さすがにかわいそうになったので、魂魄の端末にあるサイトのキャッシュを
消しておいた。


その後朝倉の怒号とボスの慟哭が耳に届いたがそれはそれ。
魂魄は証拠隠滅が功を奏しお咎めはなかった。