■月 ○日  No434 人形達の夜


朝会社に出社したらメイドの数が増えていた。
社員全員コスプレでもはじめたのかとも思ったが、みんながみんな同じ顔でびっくり
米帝開発のヴィヴィット量産型「ルーコト」と言うらしい。
お陰で社内が滅茶苦茶かしましくなった。 北白河や岡崎が速攻順応して
お茶くみなどをさせているとこを見かける。
朝倉がかなり戸惑っているが、魂魄はもっと戸惑っていた。


彼女たちの最初の仕事は幻想郷内で来年の種籾を収穫することである。
同じ顔をしたメイドたちが鎌を持って中腰になるのはシュールな光景だ。
農家の人が稲の品質が均質かどうかを確認して、それを一斉に刈り取っていく。
この種籾は来年使うものではない。
これを一定期間乾燥させた後、密閉容器に入れて涼しい倉庫に保管することになっている。


作業は順調に進んでいたが、偶然紅魔館のメイド長の姿を見かけた。
同じ顔をしたメイドロボたちに露骨に嫌な顔をしたが、仕事の丁寧さを見て
評価を改めた。 この辺はプロである。
何者だと聞かれたので「新種の魔法生物」と答えておいた。 間違ったことは
言っていないつもりだ。
自分のところにも欲しいと言っていたが、そんなことをしたら紅魔館に勤めている
デーモン族のおねえさんや妖精たちがリストラされかねないので
適当にお茶を濁しておいた。


夕方、メランコリー嬢が定期メンテのためにやってきた。
大量のメイドたちをみて、「やっぱり変態だったか」と言ってきた。
分かっちゃいたが、そんな目で見ていたのか。


岡崎がメランコリー嬢に何やら細工をしている。
何をやっているのだと聞いたら、なんと盗聴器を仕掛けていた。
さすがにコメントに困った。
「きれい事ばかりじゃないのよ」という岡崎の言葉には何か決意みたいなものを感じた。