□月 ●日  No992 月兎と休日マスター


毎年毎年同じようなことを書くようで嫌になるが
うちの会社にゴールデンウイークなんてない。 商社なのに何故無いと友人に言われるが仕方ない。
ありのまま言ってやりたい気分に駆られる時もある。


今日、冥界の研修ということで死神軍団を列車に乗せて一路月に向かったわけだが
生と死が混在するネクロファンタジアである月の都は死神にとっても興味深い場所であるらしい。
穢れと無縁な死神達は月の都についてもフリーパスなのだそうだ。


配達先で月兎からゴールデンウィークはないのかと言われた。
彼らは監視行為と称して地上の様子を見ることを楽しみにしている。
ここ数年の流れで、この時期に皆が大移動することも知っている。
我々のゴールデンウィークを何と素晴らしい風習なんだと感心している。
恐らくこいつらは単に自分たちもゴールデンウィークが欲しいというところなのだろう。


個人的な見解として言わせて貰えばお前らこそ万年ゴールデンウィークじゃないかと思う。
月の都の門番みたいにきちんと仕事をしている人もいるが、お前らは綿月姉妹が居ないときには
毎度毎度寝て食べて読書して過ごしているではないか。
たまに地上に降りておいたしている奴もいる。
魂魄が毎回お前らを強制送還しているのを知らんとは言わせない。


月兎がゴロゴロしている横で月面仕様るーことがせっせと品物を運んでいる。
アンドロイドだから厳密には生きているわけではない。 ライフゲームに参加しているわけではないから
穢れていないという理屈だが、ブレザー兎の中にメイド服は些かシュールな光景である。


メイドロボを指さしてこいつらも休日はないぞと言ったら、何故こっちが目上なのに
人間以上に毎日労働しなくちゃならないのかと言う始末である。
目上という言葉に刺があるが、言ってることはガキの屁理屈レベルだ。
このまま綿月妹にチクってやろうかと思ったが、負けた気がするのでやめた。


そこで休日マスターである死神小町を呼ぶことにした。
究極の万年休日小町。彼女の休日思考に兎たちも反面教師とすることを期待したが
残念ながら甘かった。 兎たちは死神の仕事をしたいと言い出したのだ。
穢れまくって二度と月にいけなくなると言うと本気で悩んでいた。


あとで綿月姉妹から一体何が起ったんだと詰問された。
事情を話したら、私たちにもゴールデンウィークがないからおあいこだと言われた。
結局、閻魔様の小言が綿月姉妹の行動とあまり変わらない事実が判明して兎たちの転職計画はおじゃんになった。


余談だが死神達の研修報告をみたら今居るところとあまり変わらなかったと書かれてあって吹いた。