□月 ●日  No991 年功序列に思う


岡崎や北白河の給料をたまたま知ってしまった。
貰っているようで意外と貰っていない印象である。
能力給がかなりあるが、そこまで沢山貰っているというわけではない。
給与が安いと思わないかと尋ねたら、二人ともそんな贅沢は言っていられないと言っていた。


八雲商事は基本年功序列である。よく年功序列が良くないという話も聞くがこと妖怪と混成のこの会社では
このことが重要な意味を持つ。
ボスの意見を借りればこうだ。成果主義は直接見えてこない貢献を数値化しにくい点で不完全であるという。
もし成果主義だけでこの会社の人事考査を行えば人間と妖怪に極端な賃金差が生じる可能性がある。
だが、実際にはそういうことはない。妖怪でも人間でも賃金は公平である。 


ここの会社にいると思い知らされるのはやはり自分が会社に護られているという事実だろう。
はっきり言って妖怪少女や神といったどう考えてもやんごとなき人々と対等に渡り合えるのは個人では不可能だ。
何も後ろ盾がなければ数分ももたず命を奪われてもおかしくないシチュエーションは何度もある。
そして、こうしたバックボーンを支えるのは妖怪だけでは無く、所属する社員たちである。
つまり自分が生き長らえているのは先人たちが積み上げた実績によるものだ。


もちろん結果を出すことは求められるが、その結果を導くためにはそれを支える人たちの努力がなくてはいけない。
例えば、納期を守る為には正確な流通システムの構築が求められる。
価格交渉をするためにはそれなりの販売実績がなければ不可能だ。
結局幻想郷を相手にする商売であってもこの基本は何も変わらないのである。


ただ、年功序列を完全に採用した場合、寿命が長く定年が事実上役に立たない妖怪の賃金は青天井となってしまう。
実際には、賃金には等級に応じた上限が設定されており、それ以上賃金が上がらない仕組みとなっている。
妖怪であっても管理職に向く妖怪と現場に居続ける妖怪がいる。これは人間も同様だ。
ただし妖怪の場合一定期間会社に在籍していると便宜上の定年となり、給与が下がるようになっているらしい。
こうしないと、次に入ってくる人間たちや妖怪たちが入る隙間が無くなってしまうからだ。


重要な点はある程度勤続年数が経った人の離職率を減らすことであるという。
一定期間仕事をやってきた人にはやはり人脈ができるものだ。 ましてや幻想郷のような特殊な顧客ばかりの場合なら
その人脈はとてつもない財産となり得るだろう。
出来れば福の神あたりと人脈を築くことができれば、きっと人生はバラ色になりはしないだろうか。


岡崎や北白河の場合、やはり月の民と人脈を作れるのが何より大きいという。
巧くやれば、美容整形も自由自在だと言われてはっとした。
そういえば浅間が飲み過ぎ+寝不足のコンボで顔にニキビができたと呻いていた時もあっという間に治った記憶がある。
実はそういうところが本当に重要なのではと思う次第である。