○月 ◇日 No185 妖怪の亡命を取り締まる


結界の外の世界では妖怪たちはしばしば資源扱いとして見られる。
といっても、奴隷のように使役されるのではなく、その能力を見込まれVIP待遇で囲い込んでいると
いうのが正しい。 従って妖怪たちを国外に連れ出すことは兵器やコンピューターを海外に持ち出すのと
同義とされる。 かなりシビアな世界である。


ある妖怪が米帝へ亡命しようとしてるという情報を得たため、冴月と魂魄を連れて取り締まりに参加した。
その妖怪は知能が高く、電子コンピューターが苦手としている素因数分解を瞬時にこなすことができるらしい。
素因数分解に関するアルゴリズムは公開鍵型の暗号ソフトで幅広く使われているため
このような妖怪が海外に流出するのは、原水爆流出よりもはるかに危険性が高い。
作戦は公安 霊能局 そしてうちの面子がそれぞれ拠出される形で行われた。


結局のところ、犯人を問答無用で射殺、妖怪を保護することに成功したが
その妖怪は自由を求めて亡命しようと思っていたらしい。
何をもって自由と考えるのか次第で、自由の意味合いが異なっているだろうと突っこみをいれたら
しばらく思案した後「確かにそうだ」と答えてくれた。
幻想郷にいても外の世界にいても ましてやこれまでのような暮らしをしていたって
本当に自由なんてものは存在するわけがない。 
立場や境遇で自己を安定するのは妖怪も人間も変わらないはずであろう。
頭がいい妖怪で助かった。 冴月も魂魄も出番はなかったが、公安に手の内を見せなくて済んだと
ボスは上機嫌であった。