□月 ◎日  No232 「ゴールデンウィーク」って食えますか?


この時期になると、幻想郷と結界の外の世界のギャップを嫌でも思い知らされることとなる。
掲示板の上には取引先会社の休日予定が張り出されている。 ゴールデンウイークである。
新入社員たちは休みがないことを知って文句をたれている。 毎年見る光景だ。


当然のことだが、幻想郷にはゴールデンウイークなどない。
一般市民は日々の暮らしに精一杯で長期休暇などとれないし、妖怪たちは毎日がゴールデンウイークだ。
だが、取引先が休みなので流通が滞ってしまう。
食料品など予め予測できるものについては問題ないが、ヴァンパイアの主人などの気まぐれで
急な対応を迫られるとどうしようもない。
事情を説明してもこちらとしては歯切れの悪いものになるし、メイド長は
「お嬢様がほしいといったらいるのです」の一点張りで絶対退かない。
今年はそのお嬢様に予め根回しをしておいた。


このようなトラブルが起こる要因は、取引先が休日前に当社の倉庫に商品を一気に
納品しようとするからである。
倉庫が商品で満杯になるので、幻想郷行きの便が増えるのだ。
妖怪たちは便が増えているのをみて自分の希望の商品がすぐ入荷するのだと
錯覚してしまうのである。 
問題はクレームで済まずにけが人が出てしまうことだ。 
うちのベテラン社員はこの時期になると御祓いを受けに行く。
かくいう私も今日お払いを済ませてきた。 効果は期待できないが気休めである。