◎月 ◇日  No297 幻想郷における水道

いつものように香霖堂へ納品へ行くと香霖が水道の蛇口を見て
なにやら呻いている。
彼はものの名前と用途について知ることが出来る能力があるため、
水道の概念が理解できずに悩んでいるのだろう。
私にこの蛇口をひねると本当に水がでるのかと聞いてきた。
水を通す管がないと機能しないことをきちんと説明した。 
適当な場所に蛇口をつければ水が出てくると誤解されてもたまらない。


幻想郷では妖怪の山など一部地域を除き水道はないから
当然井戸まで水を汲んでこないといけない。
近くに公共の井戸がなければ、川から汲んできて水がめに入れておく。
当然水がめに貯められた水は基本的に煮沸しないと危ない。
今の水道に慣れた私たちにとってはこれほど不便なものはない。


水道の話をしたら香霖が「これなら喉が渇く心配がない。
幻想郷でなぜそれを導入しないのか」と言うので
実は結界の外では水をお金で買っている事実を話した。
管の中はまったくの清水ではなく、飲めはするがお世辞にも美味しくはないのだ。
結局、飲み水にするために機械を通さなくてはいけない。
そんな話をしたら香霖は呆れた表情で「なにもかも便利ってわけではないのか」と
言って腕を組んで考え込んでしまった。
水を汲む費用をお金で払っているも同然だからだ。 
私も思わず苦笑してしまった。