○月 △日  No369 幻想郷のファッション


妖怪も女の子 化粧も大好きである。
隙間妖怪や冴月は自分の姿形を変えられるのに化粧を欠かさないし
朝倉も現代風の化粧を施しているから、妖怪でありながら顕界の
女性とは雰囲気が変わらない。


そして幻想郷にも化粧品の流行が存在する。
幻想郷だからと言ってお歯黒とか白粉を塗っているわけではない。
幻想郷の女性たちの化粧は意外なほど現代的である。


なぜなら幻想郷に紛れ込んだ外の世界の女性の化粧が真似られることが多いからだ。
さながら人気女優の化粧が流行るのと同じ構図が幻想郷でも起こるのだ。
幻想郷に迷い込んだ人が捕食されないと思ったら、メイクアーティストだったという
話も聞いたことがある。
妖怪も人間も美の探求は何も変わらないのだ。


そして、困るのが不良在庫だ。
霧雨店では毎月数ケースの化粧品が余ってしまう。
いずれも流行から外れた化粧品で、こうなってしまうと廃棄処分するしかないのだが
中にはそのまま捨てると八百万のカミから苦情がくるので仕方なしに回収するのだ。


そこでどうせ廃棄処分にするくらいならということで
香霖堂に安く納めることにした。
香霖は喜んで在庫を引き受けてくれた。


今日、香霖のところへちょっとした納品をしたら
妖怪たちが行列を作っているではないか
香霖に事情を聞いたら数ヶ月前に仕入れた化粧品が足りないと言う。
人気が一巡して、過去に売れた化粧品が売れ出したらしい。
これだから化粧品は始末が悪い。
取り合えず注文を受けて今日のところは引き返す。


取引先の発注書には注文分の半分の数量だけ発注することにした。
次に入荷したときはこの化粧品の人気がなくなっていることは容易に想像が
ついたからである。
幻想郷のファッションもなかなか侮れない世界である。