○月 △日  No368 妖怪達の恋


会社に出社すると朝倉の姿がなかった。 どうやら有給休暇をとっているらしい。
冴月が昨日の事故で朝倉がずいぶんと取り乱していたことを教えてくれた。
幻想郷の病院ではなくより機材がそろっている妖怪の山の病院をチャーターしたのも
彼女だったらしい。
この一連の行動にボスは、「朝倉は自分が傷つくのが怖いだけよ」と言っていた。
男あさりするのもどうやらその辺と深く関係があるらしい。


阿礼乙女のところへ納品にいくと、里の若い男が阿礼乙女を口説いていた。
が、阿礼乙女はただ微笑むばかりでたいした反応は示さない。
男が帰るのを見計らい、彼女に話を聞いたら「自分と付き合っても苦労するから
里の女の子とお付き合いしなさい」と言っていたらしい。


私は以前、妖怪と人間が付き合うのは難しいと日記に書いたが、
阿礼乙女の話を聞いてとても身につまされる思いになった。
彼女に言わせればいつまでも外見が変わらない妖怪たちに対して、
男が自分から去ってしまうと言うのである。


もちろん妖怪たちはそんなことは重々承知で、たとえ男性が老いても一緒にいたいと
願うのだが、最後まで寄り添って生きられるのはレアケースであるらしい。
従って、妖怪たちは恋愛に対して極端にドライになるか、逆に表層的な
付き合いに徹してしまうか両極端になる傾向が強いという。
ただし、性に対してわりとおおらかな妖怪もいるため、それらの複合的要素を
考えないと、その妖怪を正しく評価するのは難しいという。


朝倉ももしかするとそんな辛い思いを来ていたのかもしれない。
そんなことを考えていたら、阿礼乙女が「もっとも」と注釈をつけてきた
食べちゃいたいくらい愛していると言って本当に恋人を食べちゃった
ケースもあるそうな。
妖怪の恋愛もやはり奥が深い。