■月 ●日  No5029 問題は別のところにある


 妖怪を克服する方法は複数ある。
 ひとつは情報として蓄積すること。阿礼乙女が行っている手法。
 ひとつは日常にしてしまうこと。 博麗の巫女が行っている方法。
 そして最後に、命そのものを、事象にしてしまうこと。

 「最低だ」と阿礼乙女は吐き捨てた。
 確かに最低だ。”彼”にとって死とは人間ドックに行く程度の価値しかない。
 寧ろコンティニューすることで、健康を得ることが出来るので
 彼女にとっては少しだけ魅力的にも見える。しかし絶対一緒には
 なりたくないとも思う。
 
 つまるところ幻想郷で荒事をするには超人になるしかない。
 超人を育成するしかないのだが、もちろん普通にやっていたら
 精神がやられることだろう。
 
「あらそう? 彼、滅茶苦茶エンジョイしているけど」
「さっき、弾幕で焼かれてましたけど」
「数時間後に復帰するからへーきへーき。」

 問題はこんな話をした相手が朝倉理香子だったことだ。
 彼女は努力の人である。利用できるものは魔術でも科学でも利用する。
 徹底的な現実主義、生死なんてものも利用できるなら利用する人物だ。
 だから答えはだいたいこうなる。

「ところでさ、あっきゅん、いい男紹介してくれないかな?」
「前紹介した人はどうしたのよ。」
「うーん、最近音信不通なのよ。」

 朝倉はどこまでも平常運転だった。
 そんな彼女を癒しとして利用している稗田阿礼乙女も似たようなものなのかもしれない。
 自分の悩みも彼女たちのようなマイウェイの前では小さなものではないかと、
 そう思えてくるのだから不思議なのだ。
 
「勝手に殺すな」
「あら、生きていたの? トドメさしておく?」
「遠慮するわ。」

 黒焦げになった”彼”がツッコミをいれてきた。
 前言撤回。