□月 ★日  No563 お菓子を配りましょう(二年目)


一体何が起こったのか今ひとつ理解できないのだが
今年はなんと、たくさんの義理チョコを貰うことができてしまった。
浅間や朝倉がチョコを配り始めたため、他の面子も右へ倣えしただけかもしれないが
それでも大きな一歩である。


自称現人神からチョコレートの注文があったが断る羽目になった。
幻想郷にはチョコレートがあまりない。実は明治時代にはチョコレートは日本に入り込んでいたのだが
いざ幻想郷に隔離する段になって、中間管理職狐が毒味をしたところ中毒症状に陥ったため
それ以来幻想郷への運び入れは大きな制限が加わってしまった。
紅魔館に条件付でチョコレートを卸すときも食べさせてはいけない妖怪たちをきちんと伝えている。
自称現人神もこれにはかなり驚いている様子だった。
結局クッキーを作ることになり、必要な材料をとりあえず用意する。
おねえさんが顔を真っ赤にして高速でかき混ぜたホイップクリームをはさんで
ケロちゃん帽のカミ様が方々に配っているようだ。 お返しは信仰らしい。


阿礼乙女の邸宅では明羅女史が作っている団子目当ての子供やら妖怪たちが集まってきていた。
割烹着姿でやってきた明羅女史と阿礼乙女にびっくりした。
阿礼乙女の頭には歴史だけではなく料理のレシピも完璧に収録されているらしい。
幻想郷で凝った料理を作るときは割と体力を使うので、その分は明羅女史が補っているといったところか。
彼女たちの料理は安定株なので安心して食べられる。
去年はだれにももらえなかったと明羅女史に言ったら、素直にくれと言えばいいのにと言われた。


鴉天狗はイベントの煽りに余念がないようだ。
幻想郷の外では何を渡すのか訪ねられたのでチョコレートの話をしたら
天狗の間では毒物扱いになっているらしい。 確かに白狼天狗あたりが食べたら中毒症状になるだろう。


香霖堂では香霖がハート型のお菓子の前で難しい顔をしていた。
霧雨のご息女が作ったというお菓子というより物体を前に難しい顔をしていた。
なんでも魔法のキノコが入っているお菓子らしい。
昨年のこともあって彼も慎重になっているのはわかるが、女の子がつくったものを食べないことは
失礼だと諭して強引に喰わせた。
屋根の上に上がった香霖を止めるため結局薬屋を呼ぶ羽目になった。
確かに魔法のキノコだった。


幻想郷はやっぱり平和だと改めて感じる日であった。