□月 ●日  No712 風見女史の抗議


阿礼乙女のところへ商品納品。納涼関係のオンパレード。
一番人気はやっぱり葦簀だろう。 葦簀を用いることで冷房効率を約5割上げることができると言われる。
電力インフラが不十分な幻想郷にとって、こうした納涼グッズは発電所稼働を押さえる意味でも
かなり重要な存在と言えるだろう。


一通り物を納めてやれやれと思っていた矢先、風見女史が阿礼乙女を訪ねてきた。
かなり珍しい来訪だと思う。
割と怖い顔をしているのでまともな話でないことは間違いない。
さっさと逃亡しようとしたら明羅女史に制された。 
今のままでは脱出できないらしい。


風見女史ほどの方がここに来る理由は一つしかない。
幻想郷縁起の内容に対する抗議だ。
以前ボスとも話したことがあるのだが、鴉天狗のタブロイド記事と違って
阿礼乙女の書く書物は一定の力を持っている。
その中で悪く書かれてしまったら、阿礼乙女が転生する向こう100年ほどの間
阿礼乙女の独断と偏見で書かれた評価を受け続けないといけない。
妖怪たちによってはこれが致命傷となりうる。


実際問題、幻想郷縁起が発行されてからは、
風見女史に近づく輩は大きく減ったらしい。
おまけに花たちの受粉を助ける存在である虫たちまでものが
風見女史を避けるようになっているのだ。 大迷惑である。


阿礼乙女は落ち着き払ってNOと答えた。
阿礼乙女自身、自分のやっている行動に誇りを持っている。
譲れない一線があるのだろう。
私的にはさっさと直してしまうのが正しいと思う。
少なくてもそうすることで全て丸く収まるのならそれが一番ではないか。


浅間に言わせれば風見女史は幻想郷縁起で言うほど怖くないらしい。
気に入られているのか知らないが、彼女に対しては風見女史も優しいそうだ。
先日も花の蜜を垂らしたお酒をご馳走になったと自慢していた。
風見女史はとんでもない甘党らしい。
砂糖が欲しければ風見女史に挨拶するのが一番だというのが浅間の弁だ。
花畑に混じってサトウキビも一緒に栽培しているかららしい。


こっちもこのまま戦闘になったら巻き込まれて三途の川にレッツゴーという事態になってしまう。
とりあえず風見女史に、独自に虫たちを呼ぶようにしようと提案してみた。
実際ブレザー兎みたいに阿礼乙女の評価が不当に低い場合は、本人の努力でなんとかするしかない。
粘り強い交渉の末何とか今日のところは退散して貰えた。
阿礼乙女は最後まで譲歩しなかった。 凄い人だ。


浅間から風見女史のところが甘い物だらけになって凄いことになっているという
連絡を受けた。虫たちが大量に寄って最初の問題は解決したそうだが
一緒に虫歯と虫歯退治にやってきた博麗の巫女が乱入してそれはそれは
えらいことになったらしいが、聞かなかったことにした。