□月 ★日  No562 幻想郷におけるアレルギーの話


今年も花粉の季節がやってきたということで、うちの職員も何人かはマスク着用で
仕事を頑張っている。 うちのメインメンバーで花粉症の者はいないが
眼鏡とマスクをかけながら仕事をしているメンバーを見ると心が痛む。


幻想郷の人間はアレルギー体質の者は殆どいない。
それにはいくつかの理由が考えられそうだ。
ひとつは、アレルギーを引き起こす化学物質が廻りに少ないことが挙げられるだろう。
幻想郷の建材は概ね自然の材料であり、一部の建築物を除いてはアレルギーを引き起こすものは
無いと行って良い。


幻想郷の建築物で内装材によく使われる珪藻土壁はどちらかというと化学物質を吸着する
効能があるし、繊維壁を構成している接着剤は植物性である。 
幻想入りした建材の中でアスベストがあるが、幻想郷に浸透する前に当社で規制がかかったため
幻想郷に入り込んだ建築物以外はアスベストの問題も皆無と言って良い。
結界の外ではアスベスト封じ込めのためにかなりの手間を要するが幻想郷では結界一つで
容易にアスベストを封じることができるのでそれほど問題にもなっていない。
永遠亭の解体作業にも大量のアスベストが出て大問題になったが、その時も割と簡単に対応できた。


もうひとつ、幻想郷では花粉の量が結界の外より少ないのである。
意外に思うかも知れないが、これは林業がきちんと営まれているからだ。
計画的伐採により必要以上に花粉を飛ばす針葉樹林が生い茂っていないのである。


そしてもう一つ。 幻想郷は思ったより不潔であることも理由に挙げられる。
正確には結界の外が清潔すぎるのだ。 人間の抵抗力を奪うくらい現代社会は抗菌作用に
頼り切っている。 幻想郷では畳にカビが生えてもから拭きを繰り返してそれで終わりだが
結界の外では無水エタノールでこれでもかとばかりにカビを取る。
そもそもカビが出るのは変な薬品を使っていない証明になるのだが、そんなことはどうでもいいらしい。


社員の一人が、薬屋に依頼して花粉症の薬を作ってもらうことができないかと言っていた。
確かに月のオーバーテクノロジーと薬屋の頭脳があれば特効薬を作ることが可能かも知れない。
薬そのものを直接幻想郷の外に持って行くことはできなくても、情報を送ることはできる。
製法を持ち帰って、製薬メーカーに金を積んで頼んでもらえば作れなくもない。


すばらしいアイデアだと思って朝倉に話をしてみたら、
とりあえず月の紛争が終わってからになるが、何をされるか分からないから駄目だろうと言われた。
今日のところはこのことを書き留めて、時が来たら話を振ってみたいと思う。



補足:
実はアスベストを吸うと肺気腫になりアレルギーにはならない。
肺気腫の症状に咳や呼吸困難があるので勘違いをしている。