□月 ●日  No882 風邪が流行っています


幻想郷に住んでいる子供達の体格を見ているとやはり顕界と違うのだと感じ入るものだ。
まず体格が明らかに違う。 体重や身長などは外の世界と比較すると明らかに小さい。
服を脱げば確実にあばら骨が見える。 とかくこの時期は子供達の健康状態が気になる季節だ。
体格の違いは病気への抵抗力に直結する。ちょっとした伝染病が彼らにとって致命傷になりかねない。


もちろん顕界より楽な部分もある。
インフルエンザのワクチンは蜘蛛妖怪のお陰で予測を外すことがまずない。
薬屋が持っている強力な抗生物質結核患者を幻想郷から追い出すことに成功している。
結果顕界に結核患者が出現するという問題も発生している。


一度に運べる物資の量は常に限られている。
列車のコンテナは限界一杯に積んでいるが住民全員の胃袋を満たすにはとても足りないのは
わかっている。 便を増やすべきという意見もあるが、八雲一家の負荷が大きく増える事態になる。
列車が結界を突破した際に再び同じ場所から進入できないように結界を復旧する必要があるからだ。
すでに説明の通り、結界を突破する場所は常に別の場所となる。
それはさながら何度も繰り返される血管注射の結果 次の注射場所を探すような行為に似ている。


薬屋など医者のところへ薬品の搬入。
蜘蛛妖怪のお陰である程度制御されているとはいえ、幻想郷でも病気は流行る。
風邪薬の他に特徴的なのはブドウ糖に代表される栄養剤の多さだ。
顕界なら黙っていてもカロリー過多になれるが幻想郷ではそうはいかない。
試しに幻想郷で1000キロカロリーを摂取しようと試みればかなり大変であろう。
顕界ならコンビニ弁当一個であっさりと800キロカロリーは稼げるはずだ。
注射をするときも栄養剤を注射しているようなものだったりする。


奥ではブレザー兎が注射器を一生懸命煮沸消毒していた。
幻想郷では注射器はとても使い捨てなんてできないからだ。
別の感染症が怖いかもしれないが、実態としてはこんなものである。
もっとも注射器が使い捨てになったとして、使い終わった注射針の処理方法が
幻想郷に存在しないのでこれでいいのかも知れない。


それにしても薬屋の体力がヤワすぎて困る。
蓬莱の薬というのはあくまで死なないだけで病気にはなるらしい。
医者の不養生とはよく言ったもので、しばしば体をこわして倒れるのはどうしたものか。
そのたび寒さを凌ぐためと言ってメトセラ娘を暖房代わりに呼び寄せるのはやめて欲しい。
喧嘩をはじめた揚句、結局片付けるのは私だからだ。