□月 ●日  No881 外の世界の妖怪達


景気が悪くなるとにわかに忙しくなるのが借金取りを生業にする天狗達である。
連中に話を聞くと、結界の外の世界でもたくましく生きる妖怪たちの実態が見えてくる。


まず彼らは基本的に空を飛ばない。空を飛ぶだけで疲労するし、公共交通機関が発達した現代では
そちらのほうが遙かに便利である。 また高圧電線で感電する危険や、セスナなどへの接触の危険もある。
しかし実際の取り立てでは話は別だ。 たとえば、二階の窓から外に逃げ出す連中を追い詰める時は
とても有効だという。 相手は空を飛んでいること自体に違和感を感じないらしい。
相手は逃げる事で精一杯だからである。


妖怪と言われてなくせないのがなんと言ってもスペルカードであろう。
外の世界の妖怪たちもカードを使おうとすれば使えるのだが
基本的に全くと言っていいほど流行らないのだ。
理由は単純で、弾幕に指向性を持たせるのが難しいからだそうだ。
一定の人を攻撃したいのに、弾幕で外壁をえぐったりガラスを割ったりで色々と費用をかけてしまうそうだ。


そんな彼らだが、基本的にアパートに暮らしているそうだ。
住み込みで働いている者もいる。 妖怪の場合は基本的な住所を取得するマニュアルがあるのだとか。
基本的に仕事のえり好みをしないので意外と職はあるみたいだ。
職業的には代筆屋(司法書士)や弁護士などもいるのだとか。


さて、最近問題となっているのが妖怪と人間の間で生まれた子供達の処遇である。
国籍取得など現行法で対応するには色々限界があって社会保障には色々制限があるのが現状のようだ。
彼らは、妖怪としての能力も十分持っていないことが多く、また多くの場合周囲の反対を押し切って
生んでおり相談する窓口がわからないまま不幸な目に遭っているらしい。
お金を貸すときにそういう家庭に出くわしたときはその辺の窓口を教えることができるが
何も知らない人間からお金を借りるととても大変だと言っていた。


彼らは彼らなりの事情で動き、社会へ浸透していることがよく分かる話だと思う。