□月 ●日  No921 続アレルギーの話


去年の今頃の話である。 薬屋に依頼して花粉症の薬をつくってもらえないかと言う話があった。
昨年は色々あったが今なら頼むことができる。 朝倉が渋々了承してくれたので
彼女に直接交渉することにしたら、あっという間に薬を用意して貰った。
専門に作ると思っていたからびっくりしてしまった。


アレルギーの話に薬屋は随分感慨深げな表情をしていた。
とうとうそこまできたのかというようなニュアンスである。


実は月の都ではアレルギーが社会問題になったらしい。
あの綿月姉も一時期花粉症で散々だったようだ。 花粉はライフゲームの産物だと思うのだが
あそこは何からなにまでダブルスタンダードなところだから深くは追求しないほうがよさそうだ。
清潔さについては徹底しているであろう月の都であるが、どうやら問題は別のところにあるようだ。
なんと、清潔すぎることが問題だというのである。


そもそもアレルギーとは免疫機構の暴走が招いた問題であるという。
普段からある程度雑菌などに晒された生活を行っていると
免疫機構もある程度の慣れるのだが、あまりに清潔な暮らしをしていると
ちょっとした異物にも過剰に反応してしまうのだそうだ。
ちょうど幻想郷の住人に抗生物質を投与するとやたら効いてしまうのと同じ理屈である。


つまり幻想郷でアレルギー患者が殆どいないのは
アレルゲンと誘導物質が少ないこともさらことながら、ある程度不潔であるとも言えるようだ。
なんという結論だろうか。
実際問題、ノミやシラミ問題が噴出していただけに納得せざるを得ないところだ。


せっかく薬屋から貰ったアレルギーの特効薬だが、里香女史に奪われて確認作業をする羽目になった。
別の何かが入っていたら大問題になるからだそうだ。
本来なら臨床試験だっているというのが里香女史の言い分である。 言われてみれば確かにそうだろう。
結局いつまで掛るのかと尋ねたら、今年は無理と言われた、
本気で横流ししてやろうかと思ってしまった。 薬屋に申し訳ない気持ちになったので事情を話したら。


「まあ、当然でしょ」とあっさり言われてほっとした。