□月 ●日  No920 対メリー戦


メリーことマエリベリーハーンは境界をみることが出来るという。
最初私は彼女の能力に懐疑的だったが、この考えを改めることにした。
それは久しぶりに彼女に会ったときのこと。
自称現人神の件もあるので余計な事を話さないようにしていたら
月の結界の中で土下座をしている私の姿を見かけたと言われて盛大に吹いた。


メリーは顕界にいる魔術師である。 当然の事ながら幻想郷の中を見ることができると
朝倉から警告はされていた。 しかし具体的な行動までも見ることが出来るとはなかなかの術者だ。
土下座した理由は聞くな。


最近月の結界まわりの暗号処理が甘いためか、メリーでさえでも月の結界の中が
覗ける事態になっているということだろう。
どうせ覗かれてもどうってことはないだろうが、気分的にいい物ではないのは確かだ。
それよりも私の姿が捉えられているのが不味い。


そこで私が何をしたのかを聞いたところ。 その全てに心当たりがあった。
彼女の能力は本物だというより他はない。
しかも同情までされた。 ここまで来ると色々泣けてくる。


メリーを相手にすると本当にやりづらい。
何しろ彼女は幻想郷を幻視できるのだ。 本当は魔法使いでそこそこの訓練をしていると
不可能ではないらしいのだが、儀式抜きでまともに見られるのは彼女くらいなものである。
この調子だと自称現人神の姿も捉える日は近いかも知れない。


とりあえず私に似た誰かだということにした。
そもそも月に行っている事が分かったら、絶対レンコと一緒に月に行くんだと訊かないこと請け合いだからだ。
第一私が幻想郷でものを送っていることすら秘密だしそのことを彼女は知らないわけだから
んなものあるか常識で考えて とだけ答えておいた。


なんとかかんとか話をはぐらかしてその場を離れる。
しかしすれ違いざま最後の一撃が私の心を深く抉った。


「で、あのブレザーはどうしたの」と。


私の胃の中は煮えた胃液で一杯だった。