□月 ●日  No919 月面仕様パワードスーツ


私がいつも妖怪が怖い怖いと言っていたせいかどうか知らないが
綿月依姫がなんと私に月の技術を応用した武装をくれるという。
本当かよと思って戴いた袋の中身を開けたらそこにはブレザーが入っていた。


冴月が横から覗いてきたので、事情を話したら「懐かしい」と言われた。
彼女も昔この衣服を着ていたのだという。
このブレザー、某アメコミヒーローが着る全身タイツに匹敵する防御力を誇るらしい。
射検場でマネキンにブレザーを着せ、そいつに向かってアサルトライフルを撃ち込んでみることに。
するとブレザーもマネキンも無事だった。 実はすごいぞ月のテクノロジ。


学生時代に戻るようでちょっと恥ずかしい気持ちになりつつもブレザーの上半身を着てみると
ぴったりフィットした。 若干胸のあたりに余裕がある。
ふと嫌な予感がしてズボンを探す.


ない。


出てきたのはスカートだった。
どうやらウサギ用のやつを一着融通してくれたらしい。
冴月、これは着るしかないよねと人を煽る。
つまり俺に女装しろと言いたいらしい。
スカートを穿くなんて滅多に体験できないよというがそういう問題じゃないだろ。


しかしこの防御力は魅力だ。 少なくても弾幕ごっこに巻き込まれても
死なないで済みそうな分魅力だ。
一度は蓬莱の薬を服用しようかと本気で考えた私にとって
この防御アイテムは恐ろしい悪魔のささやきに見えた。
プライドをとるか命をとるか。
とりあえず着た。 笑いをこらえる冴月が恨めしい。
股がスースーする。 すぐに脱ぎたいがどれだけの防御力なのか確かめないといけない。


そこに岡崎が通りかかった。
悩んでいる私の姿を見て何事かと尋ねてきた。
ブレザーの話をしたら、表情を変えずにこういった。
「仕立てなおせばいいでしょ」
冴月と私ふたりでポンと手をたたいた。


後で聞いた話だが朝倉の白衣もブレザーの仕立てなおしで作られたものらしい。
大真面目に着たブレザーはそのまま黒歴史となったのだった。
とほほ。