□月 ●日  No808 お見合いへし合い


私のために女の人生を無駄にしてはいけない。
阿礼乙女のところに品物を持って行ったらいきなり阿求女史が仁王立ちになってそんなことを言った。
誰のことかと思えば、彼女を世話している明羅女史のことだった。
彼女のことだから自分で探すだろうと説得したが
女の幸せは結婚と一気にまくし立てられ、結局付き合わされることになった。
既に相手まで探していたらしい。 用意がいいことだ。


どうしたものかとあれこれ考えていたら地霊殿の主人に感づかれてしまった。
私に任せろというので、手伝ってもらうことにした。
後で考えればそれがまずかった。
途中で鴉天狗に合流。うちの社員のお見合いは記事になると言うので
後からついてきた。 嫌な予感が加速する。


阿礼乙女と地霊殿の主人の会合。
過去に会ったことがあるそうでスムーズに話が進む。
やはり女の幸せのためにはいい男性と一緒にさせたいと阿礼乙女。
私は苦笑いするしかなかった。


ともあれ、無理矢理説得したのであろう明羅女史と決して外見的には
悪くない男との見合いが始まった。 
私はどうかって、少し胸が痛むのだが明羅女史はあくまで幻想郷の人間だ。
できれば幻想郷の人間と結ばれたほうがいいに違いない。
我々は障子を挟んだ先でのぞき見をしている。
鴉天狗の指導は完璧だった。
相手に感づかれることなく見合いの様子を覗くことができる。



ふと横で地霊殿の主人がぼそぼそ話しているのに気づいた。
鴉天狗が必死にメモをしていたからだ。
よく聞いてみると二人の心境の実況中継だった。


明羅女史、今日の夕食のレシピを考えている。
一方男は必死。 綺麗な人をどうにかお嫁さんにしようとあれこれ話をしているのだが
我々三人の結論は、下半身直結すぎて駄目という結論だった。


取り持ちをしている阿礼乙女がこっちに合流する。
地霊殿の主人が書いたことを逐一記したメモを覗いてこれは駄目だと
頭を抱えた。


私個人としてはそれはとてもナンセンスなことだと思う。
確かに人間の判断基準は最初外見で決まるが、人間の縁はそれとは別の次元にあると
思える。 一緒にいるうちに畏敬の念をおぼえることだってあるし
逆に幻滅するときだってあるのだ。
最初にあったときの印象で全てを決めるのは早計ではないか。


阿礼乙女はそんな私の考えをガン無視して今度は地霊殿の主人を
あたらしい旦那を選ぶ段階で同行させると言ってきた。
それはよしたほうがよいと窘めると、鴉天狗が煽ってきた。
そしてありがちなことに 障子が破けた。


見事なまでのぶちこわしである。
三人は早々と逃走していた。
明羅女史に殴られると思ったが何故かお咎めはなかった。
その衣服のまま割烹着を上から着込んで料理を始めてしまった。


彼女が一体何を考えていたのかはわからない。
あとで逃走した三人が謝ってきたが、もう呆れて言葉が出なかった。
地霊殿の主人が明羅女史が怒っていないと教えてくれたが
明羅女史とどう接していいかわからなくなった。








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