■月 ●日  No5030

 「まさかお前が死神だったのか?」
 開口一番、妖怪相手に色々やってる探偵のおっさんに言われたのがこいつだ。
 「実は死神代行なんです」
 「なんだそりゃ、どこかの漫画か?」
 「まあそんなところです。」

 彼は、八雲商事に敵対するとある会社を監視してもらっていた。
 敵対的買収に際して彼らが何かをしでかすのは明白だったのだが
 まさか殺しまでやっちゃうとはなかなかだ。
 彼を助けることは不可能な以上やることはかなり無茶だった。
 強制的に幻想郷に送り付け、先ほど黒こげのところに朝倉にとどめを刺された自分が
 こうして迎えに行った次第だ。時間ぴったり、見事私の頭上に落下した探偵のおっさん。
 
 めっちゃダンディで、そのまま刑事もののテレビにでも出たほうがもっと儲かりそうである。
 そんな彼は元々カタギだったが、この手の案件ばかりを処理するうちに、その手の
 専門家になっていた。八雲商事もお呼びを描けるか悩むところだが、こうした
 スキル持ちは手癖がついてしまっていて対応が難しいという。

 「ここは一体どこだ?」
 「死後の世界ですよ。 死語の世界じゃないですよ」
 「では私は失敗したと。」
 「いやあ厳密には失敗していません。」
 軽すぎる私の話に少々憤慨した探偵が目を見開いた。
 
 「そもそも、あなたは死んでいません。死後の世界って場所に飛ばされただけ。」
 「なんだと」
 「だからあなたは死んではいません。回収したんです。」

 嘘も方便。
 そういえば自分も同じことを言われたなと軽く遠い目をしてみる。
 
 「まあとりあえずここを離れましょ。あなたも知っているでしょ。
  ここから脱出する方法。」
 「生き返るのか?」
 「だから死んでませんって。」
 
 ひらひらを手を振って、アピールしてみる。
 「あなたには聞きたいことがあるんです。とりあえず駐在所にどうぞ。」
  
 まだ自分が置かれていることに混乱している探偵を引き連れて
 ルート182の侵入口より、駐在所への道を選ぶ。
 親の顔より見たエリア。 土地勘なら地元よりあるかもしれぬ。
 少し悲しくなったが、まあいいか。