○月 △日  No389 ヴィヴィットの床屋


幻想郷における床屋は、現代とひけをとらないきちんとした設備が整っている。
これには幻想郷における化粧技術と同様に、結界の外から散髪の技術者が
流入する度、幻想郷内で髪型のムーブメントが起こるからである。


霧雨店を覗けば、理髪のための様々な道具が一個のコーナーとして鎮座している。
しかし幻想郷の理髪用品には重大な違和感がある。 白髪染めがないのだ。
もちろん白髪染めを入手しようと思えば不可能ではない。
香霖堂あたりにいけば割と容易に入手できる。


幻想郷では、不思議なことに白髪の割合が少ない。
朝倉に言わせると、現代社会は髪の毛の油を取りすぎてしまうそうで
頭を守っていた油分を取り除いた為に、毛髪に無駄な負荷がかかることが
しばしばあるらしい。
もっとも、現代社会においてはストレスも原因としてあるだろう。


理髪店に整髪剤を卸に行ったら、ヴィヴィットがそこで働いていて唖然とした。
幻想郷における床屋人々との交流の場であり、情報収集にはうってつけの場として
朝倉が手配をしたらしい。 
中にはヴィヴィット目当てでやってくる困った人もいるようだ。
人形だとばれたらどうなのだろうと聞いたら、妖怪の類と変わらないから
べつに問題がないと店主が言っていた。 なんだかな。


ヴィヴィットが理髪店にいるのにはもう一つ理由があるらしい。
日が暮れると、妖怪の少女が理髪店にやってくる。
ヴィヴィットの腕の良さを聞いた妖怪たちが深夜までごったかえすのだ。
さすがアンドロイド、疲れを知らないから長時間勤務もお手の物というわけだ。


帰ったら米帝の技術者が最近ヴィヴィットの消耗が激しいとぼやいていた。
部品の改良も急ピッチで行われており、量産化の道筋も立ちそうな状態らしい。
理髪店の店主がもうひとりほしいと言っていたが、本当にもう一人やってきたら
どう反応するのだろうか気になるところだ。