○月 △日  No388 面倒ごとは外でお願いします


列車から荷物が搬出されるのを見つめていたら、見たこともない天狗ふたりが
私の名前を呼んでかなり焦った。


一体何事かと聞いたら、二人はにっこり微笑むと会社で見たことのある
あの二人へと姿を変えた。 それはこの前うちの会社にやってきた
借金取りであった。


幻想郷へ旅立つ者の中には、結界の外でしこたま借金をこさえて踏み倒そうと
している者がいるという。
二人はそんな不逞の輩に現実を教えてやる存在らしい。


一般の街金は幻想郷に行ってしまった者を追跡できない。
そこで彼女たちのような天狗が、所謂返済不能な債権を安価で買い取って、
取り立てを継続するのだ。


幻想郷では酒屋が金貸しになるケースが非常に多いらしい。
それだけ幻想郷では酒の需要が多く、それは結果的に酒の供給元に
大きなお金が集まるのである。
結界の外でも遙か昔は「土倉」と呼ばれる酒屋や米屋が町金融に
なっていた事実があり、その風習が幻想郷に残っている格好だ。
この二人も酒豪である天狗のお酒を管理している天狗の一派である。


二人から証文を見せてもらったら、どう見ても
自己破産一直線の高額な借金である。
一緒に本人の写真も見せてもらった。 蛇の髪飾りが印象的の少女
どこかで見たことがあるような気がする。
それは博麗神社の場所を教えてほしいと言っていた、
態度のでかい女だった。


なんかまた厄介ごとが外から転がり込んできたような気がする。
中間管理職狐は一体何をやっているのだろうか。