■月 ○日  No429  とある研修風景


ハロウィンを控えて米帝出身の幻想郷住民の帰省手続きに追われる。
数も多く人種も多い米帝の幽霊は、ハロウィン終了後も不法滞在する者が後を絶たず
それを専門に捕獲する民間の幽霊退治屋が商売として成り立っている。
そこで幽霊退治屋が幽霊の照合をするためのデータベースを用意しないといけないらしい。
昔は辞書サイズの台帳を演算が得意な式神に照合させていたのだが
今ではずいぶんと電子化が進んで便利になったそうだ。


別室では交通整理方法の研修にやってきた黒服のみなさんが冴月の講義に耳を傾けている。
海外で戦闘訓練を繰り返した冴月にとっては、英語を話すのは造作もないのだろう。


午後はスペルカードの研修に同席、といっても簡易カードを渡すとかの雑用係である。
幽霊たちとの戦闘用に開発されたスペルカードだが、屈強な男たちが
スペルカード一つ取り扱うのに四苦八苦している。
そんな彼らを朝倉が上機嫌な表情で文字通り手取り足取り教えている。
おおよそあり得ない手つきで。
書類を届けに来た北白河にパイプ椅子で殴られ悶絶する朝倉の姿を
見守ったあとこの場を離れる。


私が思うにスペルカードを使いこなすためには、まず度胸がいると思う。
要は自転車に乗るのと同じだ。 おそるおそるペダルを踏んでもだめで
思い切って前に乗り出さなければ乗ることができない。
頭が弱い氷妖精がカードを使うことができるのも度胸のためだ。
スペルカード実行はバックファイアが怖い。 下手をすると命を落とすまではいかないが
大怪我を負ってしまうことになる。
射検場横では医者がスタンバイしているのだからどれだけの状況かは分かってもらえるだろう。


研修が終わったら朝倉が必死な表情で男を誘っている光景を目にした。
仕方がないので、朝倉の机に常備しているスポーツ新聞で作ったハリセンで殴っておいた。