□月 ●日  No870 やってきたヨッパライ


地下から浅間を回収するよう、指示を受けてる。
現場に急行すると、鬼たちと飲み比べしている浅間の姿があった。
鬼たちは大喜びだが、こっちは最悪だ。


通報者は地霊殿の主人だった。 
私は無能力なので心を読むことはできないが、これだけはわかる。
「さっさとこいつを回収してくれ」って頭で思っていたら
青ざめた顔でうんうん頷いてくれた。


お酒で酩酊状態になった頭を読むのはさすがに地霊殿の主人でさえでも拷問に近いようだ。 
そもそも酔うということは脳の一部機能が麻痺しているという意味である。
本来なら、前頭葉で行われる感情の抑制機能が十分に働かなくなることで
酒癖の悪さが体現されるわけだが、この状況を拾うとたちまち体調が悪くなるようだ。


死体運びの猫はそれを利用して、自分が隠し事をしたい場合はマタタビを使って
酩酊状態になるらしい。もっともマタタビを使う=隠し事になってるののはご愛敬のようだ。
灼熱妖怪はすでに論外である。 トリ頭らしく思考しているそばから忘れてしまうので
思考を読み取っても最初から意味不明であるという。


話を戻すとこうだ。
地霊殿にロシア美人の鬼勇儀嬢とうちの浅間が乱入した。
主人の妹君を運んできたというので様子を見ると、完全にぐでんぐでんになっており
一歩間違えれば急性アルコール中毒になっていた状態だったらしい。
二人はいきなり地霊殿の中で酒盛りを開始。
普段は人が来なくて有名な地霊殿。実は結構なお酒が眠っていたのだが
たちまち二人の胃袋に収まってしまい。 半泣き状態でこっちに通報したようだ。


とりあえず浅間を説得に掛る。
早く帰らないと本当にボスに何を言われるかわからないと言うと
鬼にそれくらいいいじゃないかと言われる。 良くないから呼ばれたんだ馬鹿者。
横で地霊殿の主人が小声でそうだそうだと叫んでいる。
心を読むというのは意外とチームワークには有効かも知れない。


結局何とか、二人を追い払うことに成功する。
どうやったか? 二人がワインをとても乱雑に扱っていたのを軽く指摘しただけだ。
長期熟成した赤ワインには沈殿物があるのだが、この沈殿物が混ざったら不味いと指摘したに
過ぎない。 一度混ざったらまた沈むまで時間を待てばいい。
半年くらいのお楽しみだと言ったら納得して引き上げてくれたわけだ。
浅間が納得したからこそできる手段である。


ヨッパライどもが残した瓶を片付けて今日は終了。
ペットたちが本当は片付ける筈なのにみんなマタタビでトリップしていたからだ。
まさか奴らは最初からそれが目的でトリップしていたのか
だとしたら連中は相当策士だと思う。
帰りがけにン百年ものワインを貰った。美味いかどうかは俗物である私にはよくわからない。