□月 ●日  No872 油すましの憂鬱


妖怪油すましの話をしよう。
彼らは結界の外の世界に順応した妖怪の一人である。
照明に油を使う機会がなくなり彼らは一度は幻想郷行を考えた。
しかしそこに訪れたのがモータリゼーションの波。
彼らは車などに擬態する術を覚え現代にいたっているのである。


霊能局にも油すましがいる。 草蓮とかいうホウレンソウの亜種のような名前で
彼らがやっているおとり捜査に加わったこともある。
よく魂魄とつるみ高級車に擬態して女を釣っていたそうだが、最近は車に対する
価値観が変わってしまって大変らしい。


擬態をするときはいつもハンドルの向きに気をつけるそうで
つい逆ハンドルにしてしまって大恥をかいたことも数知れずのようだ。


魂魄と出かける用事が出来たので足ということで彼を誘いに霊能局へ足を運んだら
生憎留守なのだという。
たまたまいた小兎姫に居場所を聞いたら車検場にいるとのこと。
新年早々使い走りだと思っていたら検査するのは当人だというのである。


いろいろな車に擬態することができる油すましだが
少なくても軽自動車とそこそこの排気量の車のナンバープレートを取得しないといけないらしい。
ナンバープレートごと擬態すればいいと思ったら、スピード違反で捕まったりしたときに
問題が発生するのだという。 公用車用のナンバープレートもあるが普段の移動には
とても使えないときている。


車検ともなれば当然体中まさぐられることになるわけで、かなりの拷問らしい。
小兎姫が別の何かに目覚めるかもと言っていたが聞こえないふりをした。


最近の車検は早く終わるらしい。程なくして当人が帰ってきたが
いつハッテンな台詞を吐くのかずっと身構えている自分がいた。 
そのことを当人話したら無言で頭をどつかれた。