新年のあいさつに紅魔館にいろいろ持っていく。
美鈴女史が駐在している小屋に荷物を持って行ったら、おせち料理が手つかずで残っていた。
なぜ食べないのかと尋ねると、カロリーが大きすぎて少しづつ食べては消費しているらしい。
ダメにならないのかと尋ねると、日持ちするからおせちなのだと言われた。
よく美鈴女史が悪食とか、偏食でコッペパンしか食べないという話を聞くが
それは全くの誤解だ。おそらく彼女ほど食べ物に対して恐ろしくシビアな考えを持っている妖怪は
他にいないと断言できる。
食べ物を見せるとカロリーをその場で計算できるのだ。 しかも最新科学と比較しても殆ど
誤差がないのである。
むしろ栄養に関して無頓着なのはメイド長のほうだ。
創作中華などいろいろな料理を試しているものの、カロリーコントロールはできていないわ
無駄に油は使いすぎているわとひどい有様のようだ。
それで皆で太ったとか痩せたとかと言って騒いでいるのだからたまらない。
一度、美鈴女史の背中を触らせてもらったことがあるのだが、広背筋のしまり具合や
足回りの筋肉などが半端ではない。 これらは一般的にスポーツジムで限界まで鍛え上げるような
バンプした筋肉とは大きく違う。 あくまで丹を練り続けることによってもたらされる
下半身周りの安定を支える筋肉である。
美鈴女史の話によれば、妖怪と一般の人を比較するときも背中の筋肉と足回りの筋肉を見るとよいらしい。
特に背中やふくらはぎのあたりは明らかに違うそうだ。
ためにしに閻魔様や烏天狗のふくらはぎを覗くと確かに鍛えた跡が見え隠れしている。
テレビの格闘家にあるようようなボディビルとは全く違うようだ。
もちろん風見女史や隙間妖怪など不定形妖怪には通用しないのだが参考にはなるはずだろう。
最近は彼女のもとに自称現人神や薬屋、明羅女史など錚々たるメンバーが通い詰めているそうだ。
食糧事情が制限されている幻想郷にありながら、需要は相当あるらしい。
なるほどと納得して帰ろうとした矢先だった。
美鈴女史が急に残したお節料理を胃袋に詰めた。
彼女が食べ終わるのとメイド長を従えたヴァンパイアの主人が現れたのはほぼ同時だと思う。
綺麗になった皿を一瞥したあと、いつものように新年の挨拶が始まった。
今年もここは難儀な場所であると再認識した日であった。